伊豆に「豪華観光列車」を投入する東急の思惑 「水戸岡デザイン」は社長の希望だった!

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「THE ROYAL EXPRESS」の外観イメージ(©DON DESIGN ASSOCIATES)

列車は週2回程度の運行を予定。伊豆急とJR東日本が運行を担い、車内サービスは東急が担当する。料金は2コースを設け、食事込みで2万~3万円程度となる見込みだ。横浜-伊豆急下田間の所要時間は約3時間。東京側の発着駅を横浜としたのは、東横線が乗り入れていることで東急沿線との接点となることはもちろん「乗車時間が長くなりすぎると敬遠される可能性もあり、3時間程度の旅がいい」(竹内氏)ことも理由だという。

今回の投資額は非公表だが「小さいビル一つくらい」(野本社長)。車両だけでなくカフェ・ラウンジ設置や店舗改装などを含めれば、それなりの額であることは間違いないだろう。観光列車の運行開始に先立ち、来年3月には下田東急ホテルもリニューアルオープンする。伊豆観光の活性化にかける東急の意気込みがうかがえる。

しかし、列車の運行は週2回程度、しかも乗客数は各回100人だ。果たして投資に見合う効果はあるのだろうか。

観光列車単体で儲けなくてもいい

この問いに対して野本社長は「観光列車というのは一つの文化を走らせること。それだけで儲かるとは決して思っていない。列車そのもので利益を出すというよりは、これで伊豆が元気になることが重要」と力を込める。

「渋谷ヒカリエの『シアターオーブ』(劇場)もあれだけで利益は出ないが、ヒカリエ全体としては利益が出る。横浜からこの列車が走ることによって東急の沿線と伊豆が一体になり、地域への経済効果をもたらすことで我々の施設もうるおっていけばいい」と野本社長。鉄道と沿線開発を一体で行うことに長け、さらには伊豆急を中心に伊豆地域にグループ会社を多く抱える東急グループならではの目論みだろう。

今年7月には小田原と伊豆急下田を結ぶJR東日本の観光列車「伊豆クレイル」が運行を開始し、伊豆半島の観光は再び注目を集めつつある。「街が走るような」(水戸岡氏)観光列車を目指すザ・ロイヤルエクスプレス。鉄道を軸とした街づくりで多くの実績を持つ東急グループによる「走る街」づくりは、伊豆の観光に再び元気をもたらすことになるだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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