32歳婚活女子を混乱させる浮気男の「言い訳」 東京カレンダー「崖っぷち結婚相談所」<16>
「は……? 何言ってるの?」
「杏子とあの女豹が、比べものになるわけ、ないだろ!? 彼女とは、正直……ちょっと遊びたい……と思っただけで、杏子とは別格なんだ。あんな女の言う事、信じるなよ!」
「何よ、急にムキになって! そもそも、私と偶然再会したのも、由香を追いかけ回してた時なんでしょ? もう、全部知ってるのよ!」
「由香ちゃんに何を聞いたか分からないけど、事実が捻じ曲げられて伝わってるのは確かだよ。下手な言い訳はしないし、杏子を傷つけたのは謝るけど、少なくとも、由香ちゃんは悪意を持ってる」
知樹がそう言い切るので、杏子は頭が混乱してきた。彼は、由香が嘘をつき、杏子を陥れているとでも言いたいのか。
しかし、杏子は由香に知樹との経緯は結局何も報告していないのだし、ライバル視される理由はない。そして、知樹のこの由香への異様な敵対心。ワケが分からなかった。
低俗な痴話喧嘩に疲れ果て…
「……それにしても、あなた、由香と私を同時に口説いてたのは事実なんでしょ? それを私が知って、どんな気持ちになったか、分かる?」
「“口説いたか”って言われれば、そうなるのかも知れないけど、でも、杏子と彼女じゃ、俺の中では全然格が違うのは、分かってくれよ。俺が馬鹿な男なのは認めるし、心から謝る。ごめんなさい。でも、俺を信じてください」
杏子は、この知樹の開き直りと、理屈の通らない言い訳に、眩暈がした。
知樹はこの屁理屈を、本気で口にしているのだろうか。それとも、また杏子を口車に乗せ、騙そうとしているのだろうか。そもそも、狙っていた由香を「女豹」などと呼び、ここまでコキ下ろす発言をする知樹に、杏子は不信感も抱く。
「……それに、話は戻るけど、どっちにしろ、私たちはヨリを戻したわけじゃないんでしょ? あなたの言ってること、私、理解できないわ。いずれにせよ、もう連絡しないで……!」
「いや、違う、杏子。待っ……」
杏子はそこで会話を打ち切り、スマホの電源を切った。
―私、一体を何をやってるの……。
低俗な痴話喧嘩に疲れ果て、杏子はベッドにバタンと横になる。
そして、やっとウトウトと眠りにつき始めたところで、今度は部屋のインターホンが、何度も鳴り始めた。
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