トランプは、ノースカロライナ州ゲイツ郡で、違法移民に断固たる処置を取り、イスラム教の改革主義を支持する地区を厳重に取り締まると明言した、と49歳の福音主義アッパールーム教会の牧師であるエリック・J・イヤハートは言う。「ここ8年の間で、米国は従来のユダヤ・キリスト教の国から明らかに変化していった。そして多くの信者がそれを懸念している」。
ゲイツ郡の農村地区に住む1万2000人の有権者が2012年にはオバマを支持し、それは投票の52%を占めていた。ところが今年の選挙戦ではトランプへの票が増加し、トランプ支持が53%を占めた。
ゲイツ郡の共和党委員長である38歳のトーマス・ヒルは、トランプの単刀直入の物言いと海外に流れた製造業の仕事を取り戻すという約束も魅力だったと言う。
産業地区の有権者からの支持も変化
産業地区の労働階級有権者の間で人気のない自由貿易協定を廃止するとの約束も含め、トランプの経済的なメッセージもまた、デトロイトの北の圧倒的に白人が多い地区であるミシガン州マコーム郡での好結果をもたらした。その郡で投票した有権者も2012年より1万4000人以上も大幅に増え、その53%がトランプへ、42%がクリントンへ投票した。
4年前にはオバマが52%を少し下回る票を獲得し、マーコム郡で勝利したが今回は逆転した。「ここに住む多くのブルーカラー達は共和党に投票した」と59歳の建設作業員で、2012年には票を投じなかったトランプ支持者のデビッド・フェアは言う。「彼らは政治家にうんざりしている」。
フェアは、不法入国・移住を根絶するというトランプの約束も気に入ったと述べた。「不法滞在者にどう対処するのか見るのが今から楽しみだ」。
冒頭のエピソードに戻ろう。以前は鉄鋼業に頼っていたペンシルバニア州ノーサンプトン郡と近隣のリーハイ郡は、産業の衰退から立ち直った。
2つの郡にまたがるベスレヘムでは、古い製鋼所の周りが新しく開発され、2400人の従業員が働くサンドカジノリゾートを含め、急激な成長を遂げている。日本のオリンパスのような大企業もその地区に移ってきた。リーハイ郡とノーサンプトン郡には、他の州に比べ、7万5000ドル以上を稼ぐ世帯が多く、州全体の36%を占める。
本来、こうした場所はクリントンのために用意されていた地域といっていいだろう。しかし白人の高齢者層はトランプが制覇した。ベスレヘムにある全米鉄鋼労働組合のオフィスの地階でマクアンドリューが毎週開くポーカーのテーブルの周りでは、市の製鋼所を退職した男達が集まり、なぜクリントンがオバマのように成功しなかったのか様々な意見が交わされた。
彼らの意見が一致しているのは、彼女が説得力のあるメッセージを伝えられなかったという点だ。テーブルを囲む5人は皆、これまで生涯にわたって民主党を支持してきたが、クリントンに投票したのは3人だった。
「彼女はすべて今までと変えない方向で行くつもりだったのだろうが、変えなくてはいけないことがあると多くの人が感じたと思う」と80歳のケン・レイデンは言う。彼はクリントンに投票したが、党に対しての忠誠心からというのが主な理由だ。「彼女は国民に新しい何かを示してくれなかったんだ」。
(執筆:ピーター・アイスラー、追加報告:フロリダ州のレティーシャ・スタイン、ワシントンDCのハワード・シュナイダー、ノースカロライナ州のゲイリー・ロバートソン、ミシガン州のティム・ブランフォルト、編集:ジェイソン・スゼップ、ロス・コルヴィン)
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