クリントンは5990万の得票数を得たが、2012年にオバマが勝ち取った6590万票に比べて600万票少なかった。伝統的な民主党地区での彼女の弱さが、多くの選挙人を失う結果となった。
「クリントンは、ワシントン体制を一新する見込みのない現状維持の候補者としての印象を与えた」と74歳のマイク・スライは言う。彼はフロリダ州ピネラス郡に住む退職者であり、無党派層に属しているが、2012年にはオバマを支持し、今年はトランプに投票した。経済の現況と「オバマケア」による健康保険料引き上げに懸念を抱いている彼にとって、クリントンのメッセージは納得できるものではなかった。
この選挙戦の争点は「これからどういう変化が起こるか、どのようになってほしいか、という基本的なことだった」とスライは言う。「ヒラリーは、信頼するには問題が多すぎると感じた」。
クリントンは、なぜフロリダ州で敗れたのか
フロリダ州という主要な激戦区で、なぜクリントンは敗北したのか。前回選挙では民主党を支持したスライのような白人の中流労働階級層を維持できなかったことが原因のひとつだろう。投票率の高いピネラス郡やタンパ湾地域で退職者に人気の海辺地区では、クリントンの47%を上回る48%の票をトランプが獲得した。この地域では、2012年にオバマが52%の票を獲得している。
全米での投票率(推計)は55%を少し上回る程度。2000年に共和党のジョージ・W・ブッシュが当時民主党副大統領であったアル・ゴアに勝利した激しい選挙戦以来の低い投票率だ。一期目のオバマの勝利の際には、投票率は62%であった。
クリントンは、黒人やヒスパニックなどの少数派(マイノリティ)からはトランプに勝る有権者の支持を獲得していた。ところが、そうした支持を白人層にも広げていく努力は、トランプの白人層での強さにひっくり返された。一方で、トランプは、ロムニーが2012年に得ていた少数派の支持と同レベルを何とか維持している。
農村地域だけでなく郊外の大半(特にラストベルト地域及び南部)でも同じようなことが起こった。「選挙の基本だが、一つのグループが、もう一つのグループより、有権者をまとめることに長けていた。それに尽きる」と南フロリダ大で政治学教授のスーザン・マクマナスは言う。