迷走する国交省「ホーム転落防止会議」の実態 業を煮やした視覚障害者団体が立ち上がった
――なぜ、検討会でホームドアの設置や内方線の設置をどうすべきかという議論をしないのか。
事故状況を各社で情報共有して、各社で対応してもらうのが今回の検討会の目的である。
――では、各社からどんな発言があったのか。
各社に投げかけてみたが、意見は出てこなかった。
――1社も発言しなかったのか。
会議には22事業者、2協会(日本民営鉄道協会、日本地下鉄協会)が参加した。そのうち近鉄を除く5社から発言があった。その内容は「やれることをやっていく」といったものだった。
「下がってください」ではわからない
上記のような他人事のような国交省の説明に、会見場からは「人が死んでいるというのに真剣さがまったく伝わってこない」という憤りの声が上がった。
そもそも、この検討会は8月26日の第1回開催の時点で、実効性に疑問符がついていた。「ホームドア、心のバリアフリーなど総合的な転落防止対策を進める」というのが検討会の趣旨。ホームドア設置には国が費用の3分の1程度を補助するので、国が補助率を増やすなどして、設置のスピードアップができればよいのだが、今のところそんな話は聞こえてこない。
たとえば東京メトロは、「設置駅順序の見直しを検討し、目の不自由なお客様のご利用の多い駅に早期に設置できるよう努力する」と説明している。このように設置駅の順序を見直す程度が関の山だ。
そこで、ホームドアとは違ってカネも時間もかからない特効薬として期待されているのが「心のバリアフリー」という施策だ。5年前にも議論されたことがある。当時は鉄道係員に対するバリアフリー教育や、利用客に対する啓発活動といった内容にとどまっていたが、今回は視覚障害者に積極的に声がけをしていくという、一歩踏み込んだ対応を目指しているようだ。
たとえば、今年8月に起きた青山一丁目駅の転落事故。ホームにいた係員は白線付近を歩行していた被害者に「下がってください」とマイクで呼びかけたが、その被害者は線路側に進んで転落した。被害者が係員のアナウンスをどのように解釈したかはわからないが、少なくとも、視覚障害者にとって「下がってください」という言葉だけでは、どちらに移動すれば安全なのか把握できない。
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