世界の富豪たちは今、何に悩んでいるのか 顧客条件は最低1億円!プライベートバンク社長に聞く

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日本の富裕層の悩み事は税金が高いことではあるが、いかに払わないようにするか、ではない。税金を払うことに関しては社会的な責任と感じている富裕層も多く、われわれもそういう考えには賛成している。問題は税金が高すぎるという点だ。税は払うべきだろうが、それが会社の存続や子どもに影響するレベルなのだ。

欧米と日本の富裕層の価値観の違い

もうひとつの問題が、社会の富裕層への見方が海外と異なることだ。たとえば、アメリカでは金持ちはミュージアムなどを建て、そこに自分の名前を刻むような「金持ちを見せること」を社会が求めている。だけど、日本は富を見せることに罪を感じやすい社会だ。

スイスも日本と似ているが、スイスは日本よりは富を使う社会として成熟している。基金などをすることももっと自然だ。日本の富裕層は恥ずかしがりなのではないかだろうかと感じるほど、カネがあることを見せるのに大きな戸惑いを感じている。

――最近の日本の富裕層で変わってきた動きはあるのか。

昔よりグローバル化している印象がある。それは、英語が話せるようになった、というような意味ではなく、ビジネスがグローバル化しているという意味だ。

多くの富裕層がビジネスのために香港やシンガポールなどアジアに出て、それに伴って、子どもを現地のインターナショナルスクールなどに行かせている。

――なぜプライベートバンクが日本の富裕層にとって必要なものなのに、日本では発展してこなかったのか。

実は、日本にもプライベートバンクは長らくある。

すべて日本のメガバンクはプライベートバンクの役割をもって生まれている。始まりが三菱や三井のような財閥一家であり、ファミリーでスタートしている銀行だ。

しかし、日本にはよい大衆向けの大きな市場があったし、戦後の財閥解体などがあったから、プライベートバンクとしてのイメージは消えた。元をたどれば、家族のための銀行というDNAが日本社会にまだあるから、プライベートバンクが受け入れられる素地はある。

大衆向けの大きな市場があれば、わざわざニッチな富裕層に特化した銀行づくりに集中しなくてもいい。社員教育などにもかなりエネルギーを使うからだ。小さなセグメントだが、富裕層を相手にするのは本当に大変だ。大変な決断になる。われわれは逆に大衆向けに何もやっていないからできている。

(撮影:今井康一)

張 子渓 ジャーナリスト
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