だが、経験的に皆知っているように、英語などの「スキル」は出世するかどうかの決定的な要因ではない。「スキルをつけること」や「上司に気に入られるかどうか」に一所懸命になっても、「出世ができるか」は、別の話である。
では、何がもっとも重要なのか。このことについて、ピーター・ドラッカーが的確なことを言っている。
現実は企業ドラマとは違う。部下が無能な上司を倒し、乗り越えて地位を得るということは起こらない。
上司が昇進できなければ、部下はその上司の後ろで立ち往生するだけである。たとえ上司が無能や失敗のため更迭されても、有能な次席があとを継ぐことはない。外から来る者が後を継ぐ。その上その新しい上司は息のかかった有能な若者たちを連れてくる。
したがって、優秀な上司、昇進の早い上司を持つことほど、部下にとって助けとなるものはない。(『経営者の条件』ダイヤモンド社より)
人気漫画で描かれているのは世の中の縮図
単純化してしまえば、「上司が出世すること」が、自分が出世するための決定要因であるということだ。
たとえ下衆で、人望がなく、部下に対して何もしない上司であっても、彼が出世できなければあなたも出世できない。
サラリーマン金太郎は、会社の創業者である大和守之助が引き上げた。島耕作は、上司である中沢喜一が出世し、社長にまでなったから、自分も社長になれた。
漫画はフィクションであるが、世の中の縮図である。
さて、われわれはこの状態で何をすべきだろうか。さきほどのピーター・ドラッカーの引用には、続きがある。
部下は上司を改革したがる。有能な高級官僚は新任の閣僚に対する指南役を自任しがちである。そしてもっぱら限界を克服させようとする。
しかし、成果をあげる官僚は「新長官は何ができるか」を考える。そして、「議会や大統領や国民との信頼づくりがうまい」のであれば、そのような能力を十分に使わせるようにする。
優れた政策や行政も、政治的な手腕をもって議会や大統領に提示しなければ意味が無い。しかも新閣僚は、官僚が彼を助けようとしていることを知るならば、政策や行政についての説明にも耳を傾ける。
上司を変えるのは簡単なことではない。しかし、上司を助け、成果をあげさせることは誰でもできる。
「上司の強みを活かし、成果をあげさせ、出世させよ」
これが、自分が出世するためのただ1つの方法である。
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あだち ゆうや
1975年東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事 。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上の ビジネスパーソンとともに仕事をする。現在は仕事、マネジメントに関する メディア『Books&Apps』を運営する一方で、企業の現場でコンサル ティング活動を行う
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