三井物産に住友商事… 商社の「社内保育所」ブーム

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女性に優しい職場は男性にとっても働きやすい

想定外がもう一つ。月極め6人の利用者の内訳は男性社員3人、女性社員3人。新たに入る2人はともに男性社員の子供だ。4月から2歳半の子供を預けている男性は、「妻の体調が悪いので海外勤務時はベビーシッターを雇っていた。昨年帰国して近所の保育所に登録したが全滅。海外にあったサービスもない。社内保育所のおかげで育児に参加できる」と安堵の様子。両親がともに育児に責任を持ち、仕事も続けていける環境にするのが本来の理想。同社はもちろん男性社員の利用も歓迎している。

04年1月からの5カ年計画で、積極的な女性活用を宣言した伊藤忠商事。計画開始時2・2%だった総合職の女性比率を09年3月末までに5%に引き上げる数値目標を公表。メンター制度導入や出産・育児制度の充実を図ってきた。

同時に「どう利用を促進し、社内に浸透させていくかが大切」(人事部人材戦略室の肥高理恵氏)と、06年からダイバーシティフォーラムと銘打ち、50回以上の分科会を開いてきた。女性も大きな役割を担うには何が必要かを議論し、いくつかの制度が生まれた。こうした取り組みは、男女を問わない働き方そのものの見直しに発展した。時差がある海外とのビジネスが中心の自動車第二部二課では、課独自の勤務時間を設定、30%の残業削減につながった。

メンター制度は現在、男女を問わず中途のキャリア採用者にも適用。昨年11月には出産時の男性の休暇、学校行事や家族行事を理由にしたファミリーサポート休暇も制度化。今年3月末までに出産サポート休暇は20人以上の男性社員が取得。ファミリーサポート休暇は男女を問わず70人以上が利用している。

女性社員の引き留め策でスタートした総合商社の環境整備。それがとりも直さず、現在の夫婦が望む働き方に、やっと、ほんの少しだけ追いついた、とも言えそうだ。


(山田雄大 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)
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