信販・カード業界を直撃する新たな総量規制の「中身」

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MUFGとSMFGの間にある違いは、再編成過程のタイミングの差にすぎないのか、それとも、戦略性の相違が反映している結果なのか。

注目点の一つは、銀行直系カード会社の位置づけだ。具体的には、MUFGが旧東京三菱銀行直系といえる旧DCカードまで含めた統合を実現している(旧UFJ銀行直系の旧UFJカードは東京三菱とUFJの母体銀行同士の統合の際に合併済み)のに対して、SMFGは三井住友カードを合併会社の枠組みの中には入れていない。

「三井住友カードはVISAブランドの中核であり、地銀系などのブラザーカンパニーが数多い」

ある大手カード会社の幹部は、この相違の理由を三井住友カードの立場に求めている。そうであれば、旧DCカードもブラザーカンパニーを有している。説明の決定打とはなりにくい。やはりここは、SMFGがオーエムシーカード、セントラルファイナンス、クオークという合併構成会社と、三井住友カードの両者の間にある客層の違いを踏まえたとみるほうが妥当だろう。

その一方で、MUFGは、銀行によるリテール戦略上の絵図の中で、カード会社の徹底統合を思考した。同グループは2007年秋、三菱UFJニコスの完全子会社化などを発表した際、「MUFGカード」という新たなブランドカードの投入も打ち出した。そのスケジュールはやや遅れがちだが、今も戦略は続行している。これには、DC、UFJ、ニコスという既存ブランドを「MUFG」に統一化していく狙いがあるといっていい。

複数の局地戦を挑むか、それとも、参謀本部が統一して全面展開するのか--。みずほグループのなだらかな提携戦略と並んで、今後、メガバンクの戦略に三者三様の違いが鮮明化すれば、眺める側にとっては面白い。

とはいえ、銀行グループというユニットで収益力を競い、争われる以上、それほどの相違が全線で展開されるわけではない。実際、今のところ、着手したり、着手することが決定的になったりしている部分には、それほどの違いはみられない。要するに、コスト競争力の向上という体力勝負でのレース展開になっている。

ほとんどの信販・クレジットカード会社はカードキャッシングやカードローンで粗利の多くをたたき出してきた。利息制限法の上限を超える利息収入の否定とこれから完全導入となる無担保ローン、カードキャッシングを対象とする総量規制という二つの地殻変動はその前提を覆す。

営業利益率の大幅低下はすでに現実化しているが、何もせずに手をこまぬいているかぎり、利益率はさらに低下していくしかない。消費者金融会社と同様に、過払い利息返還請求も途絶えていない。だからこそのコスト競争力強化なのだ。各社が大幅な人員圧縮や拠点統廃合などのリストラを敢行した。

信販・クレジットカード会社は、莫大な顧客データを巨大なコンピュータシステムで処理する装置産業だ。より統合を効率化させていくにはシステム統合も必要だ。その模索も始まっている。しかし、これは一朝一夕にはいかない課題でもある。

さらにいえば、業務上の一連のデータ処理をすべて一社内で完結させるフル装備主義の伝統が各社で続いた結果、プロセシング部門のアウトソーシングはようやく始まった段階。受託先として名乗りを挙げる会社が続出している現状は過渡期にもなっていないことを示している。

加えて、信販・クレジットカードの引き落とし口座(決済口座)を同じグループ銀行の預金口座に集約するグループ内のビジネスマッチングの浸透も、ビジョン止まりという実情にある。与信機能どころか、決済機能が別のグループの信販・クレジットカードに奪われていては、事業再構築といってもかなりの薄味だ。

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