異常事態が続く日銀人事 政治は知らん顔 副総裁は空席のまま


 白川総裁も4月30日の定例記者会見の場で「適切な方を早く選任していただきたい。不都合が生じている」と語っている。白川総裁は穏やかだが、名総裁と呼ばれ、時に政府に啖呵(たんか)を切るような発言も辞さなかった第24代総裁、故前川春雄氏なら「実に不愉快である」と怒りをあらわにしたに違いない。

政治家は自分たちのポスト問題に熱心である。議長、委員長に限らず、必ず、副議長や副委員長などまで規定どおりにきちんと選ぶ。

どんなに与野党の対立が激化していても、それだけはやる。それなのに自分たちが任命したり同意する義務を負っている日銀トップ人事については、実に淡白になってしまっている。

しかしあえて断っておくが、任命したり同意したりするのは政治家の権利ではない。国民に対する義務にほかならない。そこを履き違えてもらっては困る。

ついでながら3月に行った人事では、候補者たちが国会に出席して、議員たちの質問に応答するという手続きが踏まれた。これは今後も同様に行われる。しかしその際、議員たちの質問は「ゼロ金利政策は是か非か」といった踏絵的なものが少なくなかった。

ましてや世界経済が大変な混乱を来しているさなかである。過去の政策に対してよりも、将来に向けた候補者の考え方をきちんと聞き取ってほしい。

つまり日銀トップにふさわしい見識を有しているのか否かを確認するために行っている割には、質問のレベルが高いとはいえなかった。今後は質問する側の努力が必要と言えるだろう。

さらに言えば、質疑応答の内容とはまったく無関係な理由で「ノー」のカードを切るのはいかがなものなのか。これでは国民は納得がいかないだろう。

これは民主党だけを批判しているのではない。政府の候補者選定の考え方もあいまいさが否めなかった。

何よりも候補者を選定する以前に、政府と野党が期待される日銀総裁像というものに対してきちんと議論してほしかった。

そういう方法がとられずに、一発勝負のようなやり方になってしまったのは、実に不幸なことだったとしか言いようがない。

それから福田首相にも一言申し上げたい。民主党が主張した「財政と金融の分離」に対して、同首相は「経済政策は財政と金融が一体なのだから、なぜ財政当局出身者はいけないのか、私にはわからない」と語っていた。

民主党の言い分も確かにわからないところがある。しかし、首相発言もわからない。財政と金融の二つの経済政策を上手に運営する役割を担っているのは日銀総裁ではなく、ほかならぬあなたでしょう、と言いたい。

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