「働き方改革」に見える「ゆとり教育」と同じ轍 そもそも少子高齢化は克服すべき問題なのか

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常見:なるほど。

おおた:方向性としては、「ゆとり教育」も間違っていなかったはずなんです。ただ、副作用やそれによる反発を考えていなかった。「テストの点数じゃ測れない価値観を長期的に盛り上げていこうよ」という話だったから、短期的な不利益については仕方ないということを理解したうえで、ゆとり教育を進めていけば良かったんです。でも、そこでつまずいてしまいましたね。

今の働き方をすべて否定しまっていいのか?

おおた:「ゆとり教育」という理念だけが先行したものが出てきた時に、それを十分に精査するだけのリテラシーを僕たちが持っていなかったことを反省すべきです。同様に今回の「働き方改革」についても、「長時間労働を是正しよう」「非正規雇用の格差を是正しよう」「女性の働きたい人がもっと働けるようにしよう」「労働生産性を高めよう」など、これらについては誰も反対しません。けれども、それぞれの政策をやった時に、どんな副作用があるのかを考えないといけない。

常見:誰も反対しないというか、誰も反対しづらいということですね。長時間労働に関しては死んだり、病気になる可能性があったりという意味で私は反対なんですよ。

おおた:サブロク(36)協定の見直しはマストでしょうね。

編集部註:サブロク協定とは、労働基準法36条に由来する労使の取り決め。「会社と労働者代表が合意をして労使協定を締結した場合は、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて働かせることができる」と定められており、ほとんどの会社はこの「サブロク協定」を根拠として残業をさせている。

常見:残業時間の抑制についても、危険な部分があるかと思っています。好き嫌いは別として、日本の労働市場、仕事の任せ方を考えると残業には合理性があるからです。それが会社の強みをなくすことにつながらないかということを考えなくてはいけない。

おおた:今は成果主義も導入され、年功序列ではなくて頑張れば頑張るほど給料がもらえるという建前上の仕組みになっている。しかし、若い頃というのはスキルがなくベテランに敵わないわけだから、量でカバーすることもあります。自分の成果や成長を求めて長く働く人もいますよね。それも規制するのかって問題はあります。

常見:ブラック企業に反対している研究者が徹夜で研究していたら、人のこと言えないという(笑)。

おおた:「長時間労働是正」を主張している人が徹夜でプレゼン資料を作っているみたいな皮肉な状況はありますよね。

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