フィリピン大統領ドゥテルテとは何者なのか 法律無視で麻薬犯罪者を処刑する強面の素顔

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ドゥテルテの勝因はどこにあるのか。これまでのフィリピンの政治家は「豊かさ」を約束してきたのに対し、ドゥテルテはダバオ市長時代の実績である「規律」の徹底が支持を得た。その背景には、国家制度が機能していないという、国民のいらだちがある。自国の高い経済成長が続く中で、バラマキではなく、規律による社会改革が求められるようになったこともあるだろう。

麻薬撲滅戦争が支持されるのも、官民の結託した麻薬ビジネスがフィリピンの腐敗の象徴、と考えられているからだ。とはいえ、負の側面も見逃せない。ドゥテルテは既存制度を非効率なものと見下して回避しようとする。

超法規的な処刑が横行

6月末にドゥテルテが大統領に就任後、すでに3000人以上が麻薬撲滅戦争の過程で殺された。警察は麻薬関係者が抵抗してきたので射殺したと主張するが、実際は警察自身や民間人による超法規的な処刑が横行している。麻薬の密売にかかわってきた警察らが、麻薬の売人や常習者に自分もグルだったと密告されるのを恐れ、“口封じ”に走っているのだ。これをドゥテルテは黙認する。

ドゥテルテの統治は、厳格な規律で社会を統治する「強い国家」を目指す反面、そのために既存制度を軽視することで国家体制を弱体化させてしまいかねない。法律家出身の大統領が超法規的な手段に訴えるという自己矛盾は、フィリピンが抱える問題の根深さを物語っている。

日下 渉 名古屋大学大学院准教授
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