また改修!「F-15」が現役で働き続けるワケ 新型機へのシフトが進まぬ事情とは?
そして2016年9月16日に、CNNが「米空軍、F15機を全面改修 F22の調達誤算で」と報じた。イーグルのアップグレード改修にゴーサインが出たわけだ。軍事専門誌「インターナショナル・ディフェンス・レビュー」の2016年9月号でも、この件について「予算がついた」と報じていた。
米空軍はもともと、1980年代から開発を進めていたステルス戦闘機、ロッキード・マーティン社のF-22ラプターでF-15イーグルを置き換えるつもりだった。ところが、予算の問題からF-22の調達が187機で打ち切られたために、数が足りない。その後、もっと安価で多用途性に優れた新型ステルス戦闘機として冒頭のF-35の開発を進めているのだが、スケジュールが遅れている。
一方では、ロシアとの関係がギクシャクしたり、中国の軍事力近代化が急速に進んできたりといった状況があり、ここで米空軍の戦闘機が見劣りする状況になるのは避けたい。そこで、手持ちのF-15イーグルの能力を向上させることで延命を図ろうという話になった。
1970年代の機体がいまでも現役なワケ
ここで不思議に感じるかもしれない。2010年代に開発した新型の機体(F-35)と1970年代の機体(F-15イーグル)は、比較にならないほど新造機のほうが優れているのではないか、と。
しかし、現代の戦闘機は、飛行性能の面では行き着くところまで行き着いたところがある。たとえば、旋回性能をこれ以上高めても、パイロットの身体がついてこられない。また、飛行性能向上のためにかかるコストが、それによって得られるメリットに見合わなくなってきている。
そのため、戦闘機のアップグレード改修といっても、飛行性能の向上につながるメニューはまず出てこない。レーダーを新型化して探知能力の強化を図る、搭載するミサイルを新型化して攻撃能力を強化する、敵のミサイルから身を護れるように妨害用の電子戦装置を搭載あるいは強化する。そんな話ばかりだ。
いまどきの戦闘機で大事なのは、まず「頭脳」(コンピュータ)、「眼」(レーダーなどの探知装置)、「耳」(通信機能)なのだ。「腕力」(武器)も改良するが、「脚力」(飛行性能)は今のままでもよいと考えられている。これは、欧米諸国でも航空自衛隊でも同じだ。
そのことが、アップグレード改修ビジネスの様態に大きな影響を与えている。主契約社(プライム)と副契約社(サブコントラクター)の立場が逆転する現象が起きているのだ。
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