また改修!「F-15」が現役で働き続けるワケ 新型機へのシフトが進まぬ事情とは?
軍用機のアップグレード改修では、対象となる機体を製造したメーカーが、アップグレード改修でもプライムを務めることが多い。F-15イーグルの場合、アメリカならボーイング社、日本なら三菱重工である。
実際に改修を行い、最終的な責任を負うのは主契約社だが、主契約社がすべての改修を行えるわけではない。改修に際して導入する機器やコンポーネントの多くは、それを専門とする副契約社の担当である。
そして先に述べたように、昨今の軍用機、特に戦闘機のアップグレード改修では、搭載する電子機器や武器の換装・追加が主体だ。F-15C 2040の場合、レーダーはレイセオン社、敵のレーダーを妨害する電子戦装置はBAEシステムズ社、搭載するミサイルはレイセオン社が担当する。機体メーカーが主契約社でも、実質的な主役は兵装や電子機器を手掛ける副契約社である、と極言することもできる。
機体メーカーと搭載機器のメーカーが競合
韓国空軍は、ロッキード・マーティン社製のF-16ファイティングファルコン戦闘機を導入して、「KF-16」という名前をつけて使っている。これを対象とするアップグレード改修の話が出たときに、F-16の製造元であるロッキード・マーティン社をさしおいて2012年に受注に成功したのは、BAEシステムズ社だった。搭載機器メーカーが本家本元の機体メーカーを押しのけて受注に持ち込めたこと自体、「搭載機器が主役」という実情を如実に示したものといえる。
その後、韓国空軍の件は契約額などをめぐる対立から話がこわれて仕切り直しとなり、2015年にロッキード・マーティン社が受注を決めた。だが、使用する機器がすべて同社の製品というわけではない。目立つ大物であるレーダーからして、ライバル社でもあるノースロップ・グラマン社の製品だ。
機体メーカーと搭載機器のメーカーが競合した話は他にもある。
イスラエルのIAI(Israel Aerospace Industries Ltd.)社やエルビット・システムズ社は以前から、他社製の機体の中身を更新する商売が得意である。IAI社に至っては、中東戦争で「敵機」となったソ連製戦闘機・MiG-21フィッシュベッドのアップグレード改修提案まで行った。しかもルーマニアからの受注に成功して、1990年代末期から2002年にかけて改修を実施した。機体メーカーのMiGは仕事をさらわれた格好で、当然ながらオカンムリであった。
機体メーカーだと、ライバル・メーカーの機体を改修するわけにもいかないから、事業の対象は自社製品に限られるのが普通だ(例外がないわけではないが)。しかし、搭載機器のメーカーにそういう制約はないから、却って事業展開の自由度がある。その代わり、他人が設計した機体をいじることになるので、それがリスク要因になる可能性はある。
最終的に、機体を構成するさまざまなシステム同士のすり合わせを行って整合を取り、正常に機能することを保障するのは主契約社の仕事だ。そしてもちろん、機器を機体に搭載する際には、機体のことをよく知っている機体メーカーの知見が欠かせない。改修であっても主契約社が重要な仕事を受け持っているのは確かだ。
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