「こち亀」両津勘吉が40年愛され続けた理由 失敗にもめげない「超前向き思考」への愛着

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それを物語るのが両さんと上司・大原部長のやりとり。両さんはしばしば部長の弱みにつけこんで、金儲けを思いついたり、日頃のうっぷん晴らしにいたずらを思いついたりします。欲に目がくらんだときの行動力はすさまじく、それでも決まって最後には悪事がバレて、「こらー、両津――!!」と部長の逆鱗に触れてしまいます。

どんなたくらみも失敗に終わるのがいつものオチですが、それでも両さんはまったくめげません。部長から嫌味を言われても「まったくうるさい部長だ」と気にかけず、むしろ、前回の失敗を生かして、次こそはもっとうまくやってやろうと画策します。こうした図太さ、打たれ強さこそ、両さんが多くのファンから愛される一因であり、縦横無尽に飛び回るギャグ漫画の主人公としての強みになったといえるでしょう。

両さん“らしさ”の源となるレジリエンスですが、これは2つのタイプに分けられます。1つは『逆境を乗り越えるレジリエンス』、落ち込んだとき、「よーし、頑張るぞ」と気持ちを奮い立たせ、それ以上落ち込まないようにする力です。そして、もう1つは『チャンスを活かすレジリエンス』、いわば失敗を恐れずに挑戦する力です。

これは心の状態をメーターに置き換えてイメージするとわかりやすいかもしれません。何もない状態のとき、心の針はメーターの中央にあります。この針は失敗して落ち込むと左側に傾きますが、マイナスのままだと、パフォーマンスに大きな影響が出てしまいます。そのため少しでも早く針を中央に戻して回復させる必要があります。

基本的にはこの2つのレジリエンスが高いほど、前向きな思考で物事に挑戦していく力が高いといえますが、じつはこれらの力が、両さんは子どもの頃から人並み以上に高いのです。それを伺わせるエピソードがあります。単行本71巻に収載された「勝鬨橋ひらけ!」です。

中学時代の両さんはあるとき、転校してしまう友人のために、可動橋・勝どき橋の開いた瞬間を見せてあげることを思いつきます。友人2人を連れて、両さんたちはなんとか操作室に乗り込もうとするのですが、そこに至るまでにはさまざまなアクシデントが……。

予想外の展開にこそ、ファンは笑い、驚き、涙した

『心のモヤモヤがスッと消える ひきずらない技術』(あさ出版)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ファンにとっては胸が熱くなる感動エピソードですが、こうした現実的に困難な場面でも、2つのレジリエンスが高ければ、一人あきらめずに立ち向かっていくことができます。両さんが仲間のために行動するシーンは多々ありますが、こうした義理人情に厚く、言ったことをきちんと行動で示す男気あふれる姿もファンから支持されてきた理由ではないでしょうか。

荒唐無稽で一見すれば粗野に映る両さんの行動ですが、それはひとえに「レジリエンス」が高かったからこそといえます。欲に目がくらんで無謀なチャレンジをするのも、仲間のために勇猛果敢に飛び込んでいくのも、いい意味で後先を考えずに前向きに突っ走っていったから。

だからこそ読み手は予想外の展開に笑い、驚き、ときに涙して、応援してきたのではないでしょうか。「私のそばにも両さんのような人がいてくれたら……」。そんなふうに思った読者は少なくないでしょう。

深谷 純子 深谷レジリエンス研究所代表取締役

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ふかや すみこ / Sumiko Fukaya

株式会社深谷レジリエンス研究所代表取締役 レジリエンスコーチ/コンサルタント 一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会委員 一般社団法人レジリエンス協会常務理事 山口県光市生まれ。山口大学理学部卒業後、ソフトウェア開発会社に入社。 1988年、日本アイ・ビー・エムに移ると、銀行システムのSEとしてサービス開発に携わり、サービス実施部門の管理職、アジアパシフィック統括会社のマネージャーなどを歴任する。コンサルタントとして、2007年には大型案件の受注によって社長賞受賞。 子育てをしながらのSE経験、新サービスの開発と担当者教育の実施、部下の労務管理、アジア各国担当者・米国本社との折衝などを通じて、ビジネスのあらゆる場面で「レジリエンス」が求められていることに気づく。2011年には「深谷レジリエンス研究所」を設立。2016年には、ジャパン・レジリエンスアワード2016優秀賞受賞。「レジリエンス」を高めることで、個人や組織がさまざまな困難・逆境を乗り越える力を身につけてほしいと普及に努めている。現在は、個人・法人対象に研修・コーチングを行っているほか、全国各地でセミナー・講演活動を実施中。

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