アマゾンと楽天、「読み放題」の勢いは続くか 使い勝手、品ぞろえでユーザー離れの恐れも

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不測の事態の背景にあるのは、アマゾンと出版社が結んだ契約だ。アマゾンはサービス開始当初から、読み放題の対象作品数を多くそろえようと、出版社に支払う利用料を2016年の年末まで上乗せする契約を締結した。

読み放題の場合、一般的にはダウンロード数やダウンロード後に読まれたページ数などに応じて利用料が支払われるが、利用料を上乗せする今回の契約では、書籍や雑誌についてダウンロード後、全体の10%以上が読まれた場合に、1冊が売れたのと同じ収益を出版社に支払うことになっていた。アマゾンの予想を超えた読み放題の利用でダウンロードが増えたため、出版社に支払う金額が予算オーバーになったもようだ。

出版社側も電子書籍に期待

ある大手出版の幹部は「マーケティングに長けているアマゾンが需要を読み違えたのには、正直、驚いた」と述べ、次のように分析する。

読み放題だったはずの人気作品の一部が取り下げとなったが、今後はどうなるのか?

「出版各社の『キンドル・アンリミテッド』向けラインナップがかなり充実していたこともあって、消費者の食いつきが想定を超えたのだろう。以前は読み放題サービスへのコンテンツ提供に消極的な出版社が多かったが、紙の本の市場縮小が続く中で、電子書籍に活路を求める傾向が強まっている」

アマゾン側は、出版社側に年内は続けると説明してきた上乗せ契約について、見直し時期の前倒しを求めており、複数の大手出版社からは「話が違う」などと不満の声が漏れている。

最初は読み放題の対象になっていた作品が後から読めなくなれば、利用者の失望も大きいため、こうした事態の再発防止やコンテンツ入れ替えの最適化は重要な課題といえる。

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