宇宙基本法が成立 宇宙開発の競争力回復なるか

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 しかし、今回の宇宙基本法成立で宇宙の防衛利用が加速するということにはならない。基本的に、宇宙の防衛利用の面では、すでに政府解釈などで進んでいるためだ。

まず、宇宙基本法は、【1】宇宙条約などで認められる「非侵略」の宇宙利用をすべて認めるものではなく、憲法とその下の平和主義の理念の枠内でしか運用できない。具体的には、専守防衛や軍事大国とならないこと、攻撃兵器の不保持、武器輸出三原則の枠内でしか宇宙の開発利用はできないことになっている。

また、【2】1969年の宇宙開発事業団法(NASDA法)成立時に国会で決議されたいわゆる平和利用決議「宇宙の平和利用原則」についても、当然、これを否定したり、無効にするようなものではない。

すでに政府は、「一般的に普及した技術の利用であれば、平和利用に当たる自衛隊による利用が認められる」との解釈で、偵察衛星情報収集衛星を打ち上げている。また、弾道ミサイル防衛(BMD)についても、「他に代替手段のない唯一の防衛手段であれば、平和利用原則に反するものでない取り組みであるBMDへの取り組みについては、(平和利用)決議の趣旨及びそのよって立つ平和国家としての基本理念にも沿ったもの」(2001年官房長官談話)との見解を示し、BMDは平和利用原則に外れないとしている。
 
 つまり、情報収集衛星もミサイル防衛も、宇宙基本法成立に関わらず、すでに認められるているわけだ。

いかに実効性のあるものとするか

法案が成立した今、一番重要なことは、1年後をめどに「宇宙局(仮称)」をつくることだ。法律により「宇宙開発戦略本部」が設置されるが、これは各省庁に分散した宇宙行政を残したまま、それらを調整する組織となる。

だが同時に、法律には、1年をめどに「予算要求までも一元的に行う組織」つまり、現在の組織から機能を分離・集約した「宇宙局」を作るとしている。これをきちんとせねばならない。

宇宙局設置の後は、2年をめどに宇宙条約に基づく関係法令(衛星登録、打ち上げ損害賠償など)を整備する。そして、3年後をめどにJAXAの体制なども含め宇宙行政関連組織を変え、JAXAも包含した「宇宙庁(仮称)」を作る。

このほか、宇宙基本法に基づく宇宙行政を推進するための議員連合を創設する、といったことが関係議員の間では議論され、合意されている。

加えて、今回の宇宙基本法を作る上でタッチしなかった宇宙の防衛面での利用についても政治のレベルで議論する必要がある。安全保障と平和に関する問題であり、憲法に基づき宇宙開発利用を行うのは当然だが、BMDや早期偵察衛星をどのように位置づけるか、防衛省の宇宙行政への関与をどうするかなど、細かい議論を行うことが不可欠だ。

宇宙基本法に関与した政治家は、超党派で上記のような観点から宇宙行政の進展を監視し、また、新しい宇宙政策を議論する議員連盟を創ることを進めている。筆者個人としては、基本法の作成に関与した議員だけでなく、国民新党、社会民主党や共産党なども参加するのが望ましいと考えている。

 基本法の成立を機に、多くの人が夢を持ち、子供たちが科学技術に興味を持つようなプロジェクトを打ち出すべきだろう。そして、国際競争に遅れをとってた日本の宇宙行政がまた世界のトップレベルになれるよう努力すべきだ。プロジェクトで言えば、例えば、日本が国際的にトップレベルの水準にあるロボット技術を生かし「二足歩行ロボットを月や火星に送り、探査を行う」というものなどもあろう。

また、ミャンマーのサイクロン災害や中国の地震災害があったが、こうした災害に対応するための全アジア規模の災害監視衛星ネットワークの構築も大きな意味を持つ。是非とも日本の宇宙政策と国際貢献という意味からも進めるべきだ。現在、日本が主導権をとって、「センチネル・アジア」プロジェクトを進めている。これは、アジア太平洋域の災害管理に役立てるため、地球観測衛星画像などの災害関連情報をインターネット上で共有する活動だが、このようなプロジェクトをもっと加速すべきだ。

ふじすえ けんぞう
1964年熊本県生まれ。東京工業大学卒業後、通産省(現・経産省)に入省。マサチューセッツ工科大学大学院、ハーバード大学大学院を修了。99年、東京工業大学で博士号取得。東京大学講師、助教授を経て04年参院選初当選。

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