2億円超のスーパーカー対決を知っているか ケーニグセグとパガーニ、相反する哲学
対するイタリアのパガーニは、すべてにわたって芸術的だと言っていい。美は細部に宿る、を用意周到に実践している。幼い頃に欲しいミニカーをスクラッチビルドしていたという“造形の魔術師”オラチオは、師と仰ぐレオナルド・ダ・ビンチに近づくべく、アートとテクノロジーの融合を目指しているのだ。
生産ライン(もちろん両社ともハンドビュルトだ)では、全てのパーツがジュエリーの如く扱われ、ケーシングされた状態で工程を進む。本物のカーボンファイバー、削り出しのアルミニウム、高価なチタニウム合金、特級のレザーハイド、といった極上マテリアルで出来上がったパーツの輝かしいディテールを見ているだけで幸せになってしまう。パガーニの生産現場を見学すれば、逆立ちしても買えない筆者であっても、2億円は決して高くないという気持ちになってしまうほどだ。
もちろん、パフォーマンスも一級。ケーニグセグもそうだが、シャシーの基本的な設計手法は、ル・マン24時間レースなどを戦うスポーツプロトタイプと同種のもので、言ってみれば、速く走ることに徹したレーシングカーを、一分の隙もなくラグジュアリィに仕立て上げたロードカーだ。ちなみに、パガーニに搭載されるエンジンは自社製ではなくメルセデスAMG製。ただし、パガーニ専用に再設計され、入念に組み上げられた12気筒エンジンで、メルセデス用とは似て非なるキャラクターが与えられている。
幸いにして、両ブランドには日本の輸入元があって、貴方が欲しいと思えば相談にのってはくれることだろう。ただし、いずれのブランドを手に入れようと決心したとしても、数千万円におよぶ予約金振り込みから仕様決め、生産開始まで最低でも2年は待たなければならない。特別オーダーもやりたい放題(何と言っても創始者とダイレクトにやり取りができ、彼らに自分の好みを伝え、モディファイさせることも可能だ!)だから、実際には、買うと決めてから納車まで、3年以上待つことだってザラ。それでも、世界中のスーパーリッチ&マニア(有名企業の創業者やF1ドライバーといった有名人も多い)が数十人、ウェイティングリストに名を連ねている。
彼らのガレーヂを想像することは、実はそう難しいことじゃない。ケーニグセグもパガーニも、そして前述した有名ブランドのスペシャルなモデルたちも、ずらりとくつわを並べているに違いないからだ。
(文:西川 淳)
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