がんを乗り越えた45歳経営者が伝えたいこと 病院のコネは必要?治療費はいくらかかる?

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2カ月強の入院期間中に受けた一連の治療(手術、放射線治療、抗がん剤治療、その他入院関連費用)に対し、私が支払ったのは50万円に満たない金額でした。支払いの際に、予想よりも大幅に金額が少なかったので驚いた覚えがあります。

全ての治療に健康保険が適用されたので、自己負担額は3割のみとなりますが、その自己負担額についても、自己負担限度額を超えた分は高額療養費として健康保険組合が負担してくれます。さらに後日、健保組合から一部負担還元金も還付されました。金額は35万円以上でした。この一部負担還元金を差し引くと、実質的な自己負担額は十数万円ということになります。

退院後の通院の費用は、3カ月に1回のMRI検査と診察で、自己負担額は1万円弱です。私は脳腫瘍については薬を飲んでいないため、薬代はかかっていません。

脳腫瘍治療では、健康保険の利かない先進医療として粒子線治療などが行われることがあります。粒子線治療の場合、自己負担額は約300万円にもなります。でも私のように保険診療の枠組みの範囲内の治療であれば、そこまでの治療費はかかりません。

がん保険や生命保険、医療保険にも加入しているが……

私は経営者であることもあり、いざというときのリスクを考え、がん保険や生命保険、医療保険にも加入しています。でも実際の治療費のかなりの部分は健康保険で賄われたことになります。

ただ、がん保険や医療保険に入っていたことが精神的な安心感や余裕につながったという面はありました。入院の終盤、大部屋がつらくなって2人部屋に移動したことがあったのですが、このときも差額ベッド代の負担に対して、医療保険の入院1日あたりの保険金支払額を考えて、自分の中で正当化した覚えがあります。

がん保険や医療保険は、実質的な治療費のためというよりも、精神的に余裕を持って治療に臨めるという効用が大きいかもしれません。

入院患者にとって、家族や友人のお見舞いはうれしく、ありがたいものです。しかし、がんで先の見えない治療を受けている患者、精神的にも辛い思いをしている患者、手術を前に不安を抱えている患者に、何と声をかけたらいいのかと悩む方もいるかもしれません。

あくまで私の個人的な経験をもとに、考えてみます。

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