出光興産、米国シェール革命に乗る 米ダウと提携、三井物産との合弁で石化製品工場建設へ

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今のところ工場の建設場所や総投資額は未定。原料調達の便や輸出のための港湾設備を考えると、ダウの工場があるテキサス州やルイジアナ州のメキシコ湾岸が見込まれる。総投資額は数百億円規模を想定しているようだ。ただ、メキシコ湾岸地域では近年、シェールガス・オイルのブームに伴う工場新設ラッシュで建設コストが高騰しつつあり、総投資額が当初想定の範囲に収まらない可能性もある。総投資額が1000億円規模になると、競争力の上でかなり厳しくなる模様だ。

 「メキシコ湾岸地域はエチレンのパイプラインが発達しており、必ずしもダウの工場に隣接する必要はない。一方で、輸出のための港湾設備は必要なので、投資採算を考えながら最適の場所を選定したい」(岡田氏)という。

また、天然ガス価格やエチレン価格の行方も事業の成否を左右する。現在の米国産天然ガス(ヘンリー・ハブ)価格は100万英国熱量単位当たり4ドル弱。08年には一時10ドルを超えていたが、12年には一時3ドル割れまで急落。12年後半からは米国景気の回復を反映して3ドル台前半から上昇傾向にある。

ガス価格が現状の4ドル程度ならば原油価格換算で1バレル当たり20ドル台であり、中東産の原油価格(110ドル前後)と比べて割安感が強い。しかし、将来的にガス価格が急騰する一方、原油価格が値下がりすれば、原料コストから見た競争力は相対的に低下することになる。

月岡新社長の下で海外シフトは加速へ

北米のシェール革命に乗るという意味では、出光は今年2月にもカナダのアルタガスと折半出資で合弁会社を設立。カナダ産のLNG(液化天然ガス)とLPG(液化石油ガス)をアジア向けに輸出販売する共同事業の可能性について調査を開始した。現在のカナダ産のガス価格は米国産と同等に安く、これを液化して日本などへ輸出できれば、価格面で高い競争力を発揮できる。早ければLPGは16年、LNGは17年から事業を始める予定だ。

また、今回の合弁事業は、内需が減退する中での海外強化の一環としても位置付けられる。昨年12月、出光は韓国で有機EL材料の生産を開始。今年1月には、長年の懸案だったベトナム・ニソン製油所(三井化学などとの合弁)の今夏着工が決まった。今年6月には中野和久社長が会長になり、月岡隆副社長が新社長に昇格する予定だが、ニソン製油所など数々の海外案件を手掛けてきた月岡氏の下で、出光の海外シフトは一段と加速しそうだ。

(撮影:尾形 文繁)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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