アジア専門家のグリーン氏がトランプ氏を非難するのは簡単ではない。「外交政策や安全保障問題に関して、トランプ氏は『無謀かつ危険』と大半の要人が語っている。しかしそうした非難は、仮にトランプ氏が大統領選に勝利した場合のリスクとなる」(グリーン氏)。
実際、グリーン氏には多くのアジアの要人から、トランプ氏が大統領に就いた場合にアドバイザーになる道を残すため、関係を壊さないようにとの忠告があるという。
とはいえトランプ氏によって米国の信頼が損なわれているのは事実である。信頼喪失に拍車をかけたのは、米国がNATO(北大西洋条約機構)への関与を縮小すべきとしたトランプ氏の発言である。
それでも共和党の著名なエコノミストからは、03〜05年にブッシュ政権下でチーフエコノミストを務めたグレゴリー・マンキュー氏を除き、表立ってトランプ氏を批判したり、逆にクリントン氏を支持したりする要人は出ていない。
クリントン氏にも「TPP問題」
グリーン氏はこう述べる。「国家安全保障の面から見ると、アジアにおいてクリントン氏は実行力がある元国務長官である。しかし経済面においては、彼女の提案はかつての民主党主流派の立場の左側に寄っている。トランプ氏の経済政策はまったく非現実的だ。しかし国家安全保障の公式文書に署名した人々の多くもクリントン氏に加勢していない。その理由の一つは、彼女がTPP(環太平洋経済連携協定)に反対していることだ」。
今春、米国当局者の一人が、クリントン氏は本音ではTPPに前向きだが、非難されるのを避け本音を隠したと主張した。彼は、大統領選後の「レームダック」期間に民主党はTPPを承認すると予想する。
しかし、これは希望的観測との見方もある。「クリントン氏は当初、オープンな姿勢を強調していた。しかしトランプ氏が指名を獲得しTPPに賛成か反対かを示す必要が生じ、反対の立場を取った」(グリーン氏)。
クリントン氏の政策アドバイザーの一部は、TPP実現に向け立場を見直すようアドバイスしているというが、実際に見直すかどうかは疑わしいというのが現実だ。
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