セブンが進める「ヨーカ堂構造改革」の行方 不振の衣料事業については大ナタか

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今後は8月31日に岡山県の倉敷店、10月16日に埼玉県の坂戸店、正式発表はないが2017年2月末までに岡山市の岡山店、京都府の六地蔵店、愛知県の豊橋店と犬山店、千葉県の東習志野店、2017年7月末までに千葉県の新浦安店の閉店が決まっている。

2016年度第1四半期(2016年3〜5月期)のイトーヨーカ堂の営業利益は4億円と、前年同期の0.3億円から改善した。順調な滑り出しに見えるが、実は広告宣伝費を半減させたにすぎない。第1四半期の既存店客数は前年同期比2.9%のマイナスだった。

進んでいるのは客離れだけではない。イトーヨーカ堂のある食品関連の取引先は、「儲けがないのでイトーヨーカ堂とは取引をやめた」と打ち明ける。引き金となったのが、2年前から始めた「独立運営店舗」という取り組みだ。

本部中心の画一的な品ぞろえでなく、各店舗に権限を与え、地域の嗜好に合わせた商品展開を進める施策である。チェーンストアの限界を感じていた当時の鈴木会長が「好きにやっていい。売り上げを半分にしても構わない」とまで言って始まった。

店舗によっては効果が出始めているケースもあるが、多くの店では苦しい状況が続く。前述の取引先は「独立運営店舗になってから、店舗ごとにパッケージを変えるなど、細かな発注が多くなった。多品種小ロットでは利益が出ない」と不満を漏らす。取引先の離反が進めば、イトーヨーカ堂の改革は思うように進まないことも考えられる。

衣料不振の深刻度

さらなる悩みどころが衣料の不振だ。2015年度に上場来初の営業赤字139億円に陥ったが、衣料品の値下げ処分で、利益が約105億円押し下げられたのが主因だった。

2016年度に入っても衣料品の在庫増には歯止めがかかっていない。第1四半期末時点の衣料在庫は537億円と、前年同期から68億円も増加している。在庫回転期間は単純計算で3カ月超。あるセブン&アイ関係者は「適正な在庫日数は30〜40日程度」と指摘する。ヨーカ堂は大幅な過剰在庫を抱えている現状だ。

「在庫管理が甘くなり、その負担が重く、ヨーカ堂経営にのしかかっていた。『売れる物についてはしっかり在庫を持ってやっていこう』という指示がいつしか、『とりあえず数を出せればいい』みたいになってしまった」。セブン&アイの後藤克弘副社長は今年5月、本誌インタビューでこのように語っており、売り上げを追うあまり、在庫管理が二の次になってしまったことを反省する。

イトーヨーカ堂は2016年度の営業利益予想が10億円と、2015年度の大赤字から急回復を見込む。この中にはすでに衣料処分ロス44億円が織り込まれている。とはいえ、在庫が増え続けている状況を踏まえると、在庫処分に伴う粗利率悪化も想定され、今期中の黒字化は容易ではない。

セブン&アイは10月上旬の2016年度上期の決算発表時に、構造改革を含めた新たなグループ戦略を公表する方針だ。イトーヨーカ堂については不振の衣料事業について大ナタを振るうことも考えられる。

ただ今年2月、井阪社長は自身の人事案について伊藤雅俊名誉会長に相談し、「頑張ってくれ」と支援してもらった経緯もある。イトーヨーカ堂の創業家に配慮しつつ、ウミを出し切れるか。井阪社長の決断が問われる。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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