子供に教育費をかけすぎると老後貧乏になる

年収無視の「背伸び投資」に潜む危険なワナ

田嶋優子さんと大内美香さんは、ともに50歳。大学の同級生です。学生時代は、互いに顔を知る程度だったのですが、23年前の27歳の時に、偶然、妊婦検診に行った病院で再会しました。住まいも比較的近くです。

優子さんの夫は、キャリアの国家公務員。美香さんの夫は、中堅の商社マン。20代後半、寿退社をして時間を持て余していた2人は、急速に仲良くなり、マタニティライフを共に過ごし、2週間違いで、両方とも男の子を出産しました。ちなみに田嶋家の年収は約700万円ちょっと。大内家は800万円くらいです。

オール国公立VSオール私立

優子さんと美香さんの「愛する息子の教育戦争」は、プレ幼稚園をうたう早期教育教室で口火が切られます。誘ったのは、商社マンの夫を持つ美香さんでした。半ばしぶしぶという感じだった優子さんでしたが、体操、英語、水泳、図工、音楽などをこなす2歳のわが子の姿を見れば、2万3000円の月謝も決して高いとは思わなくなりました。

プレスクールのお陰か、共に、希望の私立幼稚園に入園することができました。優子さんは官舎住まいですが、美香さんは、もともと、評判のよい区立小学校に通わせたくて選んだ学区です。息子の未来を思うと胸が高鳴ります。

「中学受験のための塾通いが始まる4年生くらいまでは、水泳と英語を習わせましょう」。再び優子さんは、美香さんに誘われます。やや派手好きな美香さんとのお付き合いに疲れ気味でしたが、一人っ子同士、兄弟のように育ってきた息子です。同じスクールに通わせ、水泳と英語を習わせることにしました。

さて、時は経ち、共に受験戦争に参入するかに見えた田嶋家と大内家ですが、教育方針の違いで進路を分かつことになります。

優子さんの夫が、中学受験に反対したのです。

地元区立の中学は非常に優秀で、上位の都立高校への進学率も高い。なぜわざわざ私立中学に行かなければならないのか。しかも「自分は国家公務員である」と。

優子さんは、「官舎に住む半分以上が私立中学に進んでいるのに」と、釈然としない思いでしたが、夫は、入塾案内に目を通そうともしません。それどころか、前々からサッカーをやりたがっていた息子を連れて、少年サッカーチームに見学に行き、さっさと入会をしてしまいました。

そんな夫を腹立たしく思った優子さんでしたが、いきいきと楽しそうな息子の姿や、熱心にサポートする夫をみているうちに、気持も和らいでくるのでした。

サッカーチームの年代の違うママたちとの交流も、優子さんの考え方に変化をもたらしました。2人3人と子供を育てている先輩ママは、「高い費用の塾に行って中学受験なんかしなくても、区立◎中、都立●高ヘ行って、ちゃんと志望大学に合格した」と、誇らしげに偏差値最上位の大学名を挙げるのです。

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