(第6回)ヒット曲『勝手にしやがれ』の「やせ我慢」分析

(第6回)ヒット曲『勝手にしやがれ』の「やせ我慢」分析

高澤秀次

●「沢田研二」人気が失速した理由

 1975年の『時の過ぎゆくままに』から、『勝手にしやがれ』『憎みきれないろくでなし』『サムライ』など、阿久悠は、沢田研二の代表作に数多く詞を提供している。

 このうち、77年の『勝手にしやがれ』が、レコード大賞受賞曲となった。
 作曲は井上忠夫、都倉俊一、井上堯之、荒木一郎、加瀬邦彦との異例の豪華コンペティションを制し、『時の過ぎゆくままに』を担当した大野克夫。
「阿久-大野」のコンビによる一連の沢田研二ソングは、以来79年の『カサブランカ・ダンディー』まで、着実にヒット・チャートを賑わした。

 だが勢いはそこまでで、80年代に入ると沢田はヒット曲から見放され、やがてブラウン管から消え去ってしまう。GS(グループ・サウンズ)時代の究極のアイドルで、ザ・タイガースのリード・ボーカルからソロ歌手に転身したジュリーの失速に、阿久悠は深く関与していたと言えるだろう。

 その理由は、沢田が阿久悠の構築した「虚構の世界の水先案内人」(『夢を食った男たち』)というキャラクターを、忠実に演じていたからである。
 けだるさの魅力、爛熟した戦後社会にふさわしい翳(かげ)りある美形スターの絶頂期は、だが70年代後半の数年間が限度であった。ポスト・モダン、ポスト大衆消費社会の潮流「ソフトウェーブ」が主流になる80年代に、ハードにセクシーなキャラが、時代とそぐわなくなるからだ。

 阿久悠は70年代のスーパースター沢田研二を、「男」というもののブランド価値が暴落した、当時の社会的風潮に逆行する、「やせ我慢を売る男」「滅び行くもののダンディズム」を体現するキャラクターに仕立てようとした(『「企み」の仕事術』)。

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 今さら聞けない競馬のキホン
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
  • ブックス・レビュー
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
好業績の裏で検査不正<br>スズキ「鈴木修経営」の光と影

5月10日の決算会見に登壇し完成検査の不正を詫びたスズキの鈴木修会長。不正は組織的・構造的な問題か、現場への目配り不足によるのか。長年にわたるカリスマ経営の副作用を指摘せざるをえない同社のガバナンス体制を詳解する。