「大胆な経済対策」の中身は、間違いだらけだ 「補正」が常態化、「成長戦略」は非効率に
筆者は経済対策を全面的に否定しているわけではなく、むしろ大震災やリーマン・ショックなどによって景気が急速に悪化している局面では、財政出動のための国債の追加発行を躊躇すべきではないと考えている。経済危機の際には民間部門(企業、家計)ができない借金をすることによって需要を創出することができるのは政府だけで、これこそが財政政策の重要な役割だ。しかし、労働市場が完全雇用の状態にある現在はその時ではない。
また、安倍首相は「新しい判断」によって2017年4月に予定されていた消費税率引き上げの延期を決めたが、これは4兆円を上回る減税を実施するに等しい。消費増税先送りによる減税分と合わせて考えても今回の経済対策はあまりに大盤振る舞いではないか。
予算は消化しきれていない
近年は予算が消化しきれていないという問題もある。たとえば、2011年度は東日本大震災からの復興を主な目的として、2012年度は安倍政権発足直後の大型経済対策(日本経済再生に向けた緊急経済対策)のため、補正予算で10兆円以上(一般会計ベース)が積み増されたが、両年度ともに約10兆円が未執行となった。
予算は単年度主義となっており、予算によって認められた国費の歳出期限が及ぶのは原則として当年度限りで、年度内に使用し終わらない金額は国庫に返納することになっている。年度内に使用できなかった歳出予算は一定の条件を満たせば翌年度に繰り越すことができるが、2011、2012年度ともに約3兆円は不用額となり結局使われないままとなった。2013年度以降は補正予算の規模の縮小に伴い未執行額も小さくなったが、それでも補正額を上回る未執行額が毎年発生している。執行額を大きく上回る予算を毎年のように組むことは極めて非効率である。
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