「オレオ」の販売終了で山崎製パンに迫る転機 契約解消により子会社の売上高の4割が消滅

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9月から投入する新ブランドのクラッカー「ルヴァン」

8月2日、山崎製パンは2016年12月期の中間決算を発表した。ヤマザキ・ナビスコは、チップスターなどの好調により、上期こそ4億円の増益となったが、9月からは主要製品が抜け落ちる。

社名をヤマザキビスケットに改め、新ブランド「ルヴァン」を投入することで、オレオなどの穴埋めを図る構えだが、一部地域では同業のカルビーが、チップスターの競合品に当たる「ポテトチップスクリスプ」の販売を開始しており、下期は茨の道となりそうだ。

とはいえ、山崎製パン全体の上期(2016年1~6月期)業績は、いたって好調だった。売上高5206億円(前年同期比2%増)、営業利益194億円(同50%増)で、営業利益は期初予想を46億円も上回った。ここ10年間で最高の水準となっている。

「超芳醇」シリーズが貢献

「稼げるパン」へ変貌した「超芳醇」と、看板製品の「ロイヤルブレッド」(記者撮影)

上期の営業増益を牽引したのは、お家芸の食パンだ。2014年以来の高品質・高付加価値路線が奏功し、売上数量の伸び以上に平均単価が上昇した。

特に、2つあったブランドを2月に一本化するとともに品質を向上させた「超芳醇」シリーズの貢献が大きい。以前はスーパーなどで安売りの目玉となることが多かったが、高品質を訴求することで、値下げされにくい定番品売り場での取り扱いが増加。「稼げるパン」へと変貌を遂げた。

同じく2月にリニューアルした「ダブルソフト」や、看板製品の「ロイヤルブレッド」も、価格を維持しながら売り上げを伸ばした。小麦をはじめとする原材料価格の低下や、不二家など子会社の採算改善も追い風となり、企業の稼ぐ力を示す営業利益率は、前期の2.5%から3.7%まで改善した。

好調な上期業績を反映し、 今2016年12月期の通期計画を上方修正した。営業利益の増額幅は40億円にとどまり、上期に上振れした分(46億円)を下回るものの、修正計画では前期比25%の増益を見込む。

オレオなどの販売終了の影響を最小限にとどめ、力強い成長を持続できるか。国内製パン業界の盟主は今、大きな転換点にある。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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