なぜ「IS」の残忍性は、増し続けているのか 85歳の司祭はミサ中に惨殺された
「Daesh (ダーシュ)」の別名を持つISは残虐なポストモダニストだ。しかし、この種のポストモダニズムは、1990年代のヤング・ブリティッシュ・アーティストの作品を表現するために使われる、審美的なポストモダニズムと比較されたり、混同されるべきではない。
そうしたアーティストの中には、「生者の心における死の物理的不可能性」と題したサメのホルマリン漬けで有名なダミアン・ハーストや、「マイ・ベッド」のトレイシー・エミンらがいる。
彼らは対象物をフレームに収め、また、メディアが作品をフレームに収めることを期待している。もちろん、時折「くだらない」という非難を浴びることもある。
それでも、彼らは企業家精神を持ったアーティストであり、数百万ドルを稼いで平穏に暮らしている。実際、ホルマリン漬けのサメは800万〜1200万ドルで売れた。
全力使った「殺人アート」
対照的に、ISは西側に殺人アートを提供し、メディアを使っている。不穏の度を募らせる西側諸国で、各国のタブーや習慣、礼儀、そして何よりも、自由な組織とメカニズムを攻撃している。
政治学者のフランシス・フクヤマは、自由資本民主主義がソビエトの共産主義に勝利したことを「歴史の終わり」と呼んだ。彼は他に重要なことは何も起こらないだろうと述べたが、すべての社会は「人間社会の異なる、また、高度な構造を表現している見せ掛けのイデオロギーに決着をつける」と話している。
特にISのような構造を持つイスラム過激派は、これが間違いだということを証明している。イスラム過激派は全力を投じて、西側文化を人間社会の「高度な構造」の中に引きずり込んでいる。
ISがこれまでになく怪物的な組織となっているのは、そのメッセージが即座に吸収される性質を持っているからだ。それは、あらゆる手段を講じて「十字軍の連合諸国を攻撃する」というものだ。
ニースのトラック殺人者モハメド・ラフエジブフレル、6月にフロリダ州オーランドの同性愛者向けナイトクラブで49人を殺害したアフガン系米国人のオマル・マティーン、そしてミュンヘンで9人を殺害したドイツ系イラン人のアリ・ダビド・ソンボリらは、ISとわずかな接点があっただけだ。彼らはおそらく、インターネットにあるISのプロパガンダに刺激され、短期間で独自に過激化したのだろう。