強い中毒を引き起こす「身近にある」野菜 ジャガイモ、インゲンマメなどに要注意

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このほか、気を付けたいのは今が旬のズッキーニ。β-カロテン、カルシウム、ビタミンKなど、暑い季節に失われがちなミネラルが豊富で、カロリーは低め。味わいもみずみずしいですが、「ククルビタシン類」(cucurbitacins)という成分が含まれていて、中毒になると、ひどい下痢、猛烈な腹痛、そして気が遠くなるような嘔吐を繰り返します。キュウリ、ゴーヤ、メロンなどのウリ科植物などに広く見られるため、注意が欠かせません。

頼りになるのは「味覚」と「ちょっとした知識」

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中毒を避ける方法は、実にシンプルです。

病院に担ぎ込まれるほどの中毒症状を起こした人たちは、いずれも「食べたとき、強い苦みがあった」と言います。ウリ科野菜の多くは、清涼な風味が持ち味。ところがたまに強い苦みを呈するものが市場に流れてしまいます。「野菜だから、まあ大丈夫」、「残すのはもったいない」と食べてしまうと中毒症状が重篤化。違和感があったら自分の五感を信じましょう。そして飲み込まず、すぐに口から出すことです。

野菜を自分で育てている場合、「収穫期」は必ず守りたいところです。時期を過ぎたものを食べれば、ちっとも美味しくないばかりか、中毒の危険があります。こうしたものを「おすそ分け」として配れば、あなたの名誉をいたく傷つけてしまうことにもなりかねません。

ところで、植物が合成する化学成分は本当におもしろいのです。ククルビタシンには多くの種類が存在し、あなたの胃腸を機能不全にするものから、ククルビタシンB、D、El、Qなどのように抗がん剤としての研究が進められているものまであります。

WHOをはじめとする各国研究機関は、近年、野菜の薬用研究を本格化させています。「自然のものは、できるだけ自然に近い状態で食べたほうが、ずっと体によい」といった風潮は、ここ20年間、世界中の先進各国で流行しています。と同時に、各国の中毒医療センターでは、野菜をはじめとする植物毒の中毒患者数がうなぎ登りの途上にあります。

なにかと多忙な現代人が、食中毒で3日も倒れたらもう大変。重要な会議やデートが、トイレとの往復ばかりで終わったら、目も当てられません。ちょっとした注意と、ささやかな科学的好奇心が身を助けます。

これを契機に、身近な野菜や毒草について、もう一度、自分の知見を確かめてみるのはとても有意義なひと時となるでしょう。そして野菜にしても、見たこともない美味しい品種が世界中にたくさんあることを知れば、暮らしの楽しみがぐんと増えるものです。 

森 昭彦 サイエンス・ジャーナリスト、ガーデナー、自然写真家

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もり あきひこ

1969年生まれ。サイエンス・ジャーナリスト。ガーデナー。自然写真家。おもに関東圏を活動拠点に植物と動物のユニークな相関性について実地調査・研究・執筆を手がける。著書にサイエンス・アイ新書『身近な雑草のふしぎ』『身近な野の花のふしぎ』『うまい雑草、ヤバイ野草』『イモムシのふしぎ』(SBクリエイティブ)や『ファーブルが観た夢』(同社刊)などがある。

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