オバマ政権は安倍首相に何を求めるのか? 集団的自衛権、歴史問題、基地移設、そして、TPP

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――安倍首相は、普天間基地移設についてあまり発言していません。

沖縄の基地移転問題に取り組む意欲の欠如した中央政府は、何も安倍政権が初めてではない。基地移転問題については、橋本龍太郎元首相が最も積極的だった。小泉純一郎元首相は、日米同盟については非常に積極的な一方、基地問題については橋本氏ほど際立って積極的ではなかった。ほとんどの政治家は、沖縄の基地問題に深く首を突っ込んでも、問題ばかりが多くて得るものがない、と考えている。

沖縄をめぐる政治もまた、橋本氏が総理大臣を務めていた当時から、ずっと複雑化している。「次の選挙でどんなことが起こるか、成り行きを見守ろう」ということがよく言われる。沖縄では、いつも「次の選挙」がある。知事選挙、県議会選挙、名護市長選挙など、6カ月以内に次の選挙がやってくる。

問題ははるかに複雑化している

その一方で、趨勢は大きく変化した。沖縄では自民党のリーダーたちも、普天間基地の代わりに辺野古に施設を造る計画に公然と反対している。以前は、進歩的な左派と保守的な右派が対立する問題だ、という構図でとらえ、保守派が政権復帰を果たしさえすればすべてがうまくいく、と考えていたが、問題ははるかに複雑化している。

日本では政党間のバランスにも、また各政党内部のバランスにも、新たな現実が生まれている。東京の中央政府と沖縄を代表する人々との間にはギャップがある。つまり、信頼のレベルが同じではない(そもそも深い信頼はなかったが)。中央政府は、直近の沖縄県議会選挙で当選した保守派県議の支持を取り戻すべく、懸命な努力を尽くさねばならない。その保守派県議たちは選挙運動で、辺野古案に公然と反対してきた。

私はかねてより、辺野古への移転計画は最も実現性の低い選択肢だと考えてきた。今や沖縄ではリベラル派も保守派もそろって辺野古への移転計画に反対していることを考えると、その思いはますます強まる。

安倍首相はこの風向きを変えることができるだろうか。成り行きを見守るしかない。日本で保守派の首相が誕生したのは久しぶりだ。いずれにせよ、基地問題の解決には時間がかかる。

拉致被害者や改憲の問題などとは異なり、沖縄の基地問題は、安倍首相がこれまで率直に発言してきた課題ではない。安倍氏が実際にどう考えているか、私たちにはわからない。ただ、安倍氏が参議院選挙までに取り組まねばならない喫緊の課題の多さを考えると、安倍氏が基地問題に優先的に対処するとは考えにくい。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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