医者はホンネでは患者をどう考えているのか

いつでも平静でいられるわけではない

さて、以上が「共感」について著者が論じている内容である。ここでけっして誤解してほしくないのだが、著者はなにも「医師には共感力が欠けている」などと主張しているわけではない。そうではなく、著者が強調しているのは、事実として医師も生身の人間であり、自らの感情に衝き動かされることもある、という点である。

そして、やたらと理想論や精神論をふりかざすのではなく、その事実をきちんと受け入れたうえで、よりよい医療のための建設的な議論ができないか、と問題提議しているのである。

医師の「燃え尽き症候群」は深刻だ

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その意味でも、本書でたびたび言及されている、医師の「燃え尽き症候群」などの問題は深刻であろう。ときには自らの責任にとてつもない怖れを感じ、ときには死の悲しみに打ちひしがれ、そしてときには医療の現実に幻滅し、医師がパンクしてしまうことがある。

それらについても、本書では濃密なストーリーが語られているから、ぜひ該当箇所のページを繰ってみてほしい。

ところで、本書ではジェローム・グループマンの『医者は現場でどう考えるか』がたびたび言及されている。学問的な見地からすれば、本書は、グループマンの著書に比肩するほど洞察力に富んではいないだろう。

だがその一方で、その流れるような文章で、医師と医療の現実をありありと示してみせる著者の筆致には、思わず舌を巻いてしまう。本書を読んでいると、まさに原題のいう「医師は何を感じているのか」(What Doctors Feel)が、彼らの息づかいや胸の鼓動とともに伝わってくるようだ。

訳者の卓越した訳出もあって、本書は最後までストレスなく読むことができる。良質な読み物として、医療関係者のみならず、広く一般読者にもおすすめできる1冊であろう。

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