3.3兆円の賭け、孫社長の目線の先にあるもの ソフトバンクが再び挑む主力事業の大転換
反面、「高い買い物ではないか」、との見方も根強い。発表翌日のソフトバンク株が11%も値を下げたのは「高値づかみ」の懸念を色濃く反映したものだった。発表直前のARMの時価総額は2.3兆円。孫社長は5割近いプレミアムを乗せて買収する。2~3割が相場といわれる中で倍近く上乗せするのだから、株主の利益を考えればARM経営陣は反対しようがない。
一方で、ARMは英国のEU離脱にもかかわらず株価を上げた、珍しい企業だ。発表前の時価総額が純資産の8倍近い2.3兆円だったのも成長期待が大きい証し。
その源泉は半導体チップを設計する優秀なエンジニアで、米半導体大手インテルすらも一目置く。彼らに辞められたのでは買収した意味がない。
ケンブリッジの本社をそのままにする、現経営陣は優秀だから替えない、5年で英国での雇用を倍にする、中立・独立性を維持するなど、孫社長が強調したのは人材流出を危惧しているからだ。
ソフトバンク元幹部も心配する「ARMは技術主体、ソフトバンクは営業の強い会社。違いすぎる社風が流出の原因にならなければいいが」。
「変身」への課題は多そうだが…
ARM創業者は買収発表の18日を「英国にとって悲しい日」とし、「半導体分野で次に起きることを英国ではなく日本が決めることになる」と独立性喪失にツィッターで懸念を表明。すると孫社長はすぐに電話して、「志をがっちり受け止めるからさみしがらないでくれ」と諭した。
人材流出を避けられても、「スマホ向けで出遅れたインテルがIoTでの巻き返しを狙っている」(通信会社幹部)など、ARMの未来は盤石でない。「向こう3~4年の優位は揺るがないが、その先はわからない。他社から新たな高性能チップが出てくる可能性はある」(同)。
周囲の懸念を覆し事業転換してきた孫社長。今回の賭けでも見事変身できるか。
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