「息子にも説明できない所得格差の根深さ」ハーバード大学教授 ケネス・ロゴフ

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急速な経済成長の影で広がっていく格差

 だが、重要なのは“寄付”ではない。仮に貧困が寄付で解決できると考える人がいれば、それは浅はかだ。貧困問題に真剣に取り組む学者であれば、豊かな国が市場を開放し、貧しい国の社会的インフラを支援することで、貧困問題を真の解決に導くことができると考えているはずだ。

 貧困問題を解決に導いた国として挙がるのは、中国とインドである。両国は独力で貧困から抜け出した。しかし、両国が成功した理由は複雑すぎて、とても私から息子に説明できそうにない。では息子にはどのようにして、この格差の問題について説明すればいいのだろうか。

 高額所得者と貧困層との格差拡大は、急速な経済成長の影の部分として、避けられない事実なのだろうか。歴史を振り返ると、答えは「イエス」である。中国の1970年以降の経済成長は、人類史上類を見ないほどの速さで、所得配分の格差を生んでいる。もはや中国国内の格差は、アメリカを追い越し、ラテンアメリカのレベルにまで近づきつつある。

 こうした所得格差を、国の政策で解決することは容易ではない。高額所得者の多くは、自らの創造性で大きな付加価値を生んでいる。イギリスでは、投資収益に対して異例ともいえる優遇措置を与え、裕福な外国人を積極的に受け入れている。しかも高額所得者は、国境を越えて移動できる。1時間当たり54万ドルを稼げる人は、ロンドンにだってアパートを買うことができるのだ。

 また、高額所得者に税金を課すといっても限界がある。アメリカの上位9名の高額所得者は、ヒラリー・クリントン上院議員が大統領選挙のために四半期かけて集めた選挙資金を上回る金額を、わずか2日間で稼ぎ出しているのだ。いま世界は、こうした高額所得者に高い税金を課すより、適切な非課税枠を設定し、均一税率を適用する方向に動いている。旧来の複雑な税制を維持することは、もはや困難になってきている。いま抜本的な税制改革に向かっている国は少ないのが現状だ。

 私は子供の世代が、現在のような経済の効率性だけでなく、人として平等が保たれた社会に育ってほしいと願っている。どうすれば、そうした社会を実現できるのか。息子に問うと、彼は「自分で考えてみる」と答えた。

ケネス・ロゴフ
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名をはせる。

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