トヨタと日産、「究極のエコカー」巡る戦い 燃料電池車の開発で相次ぐ提携

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開発コストを軽減

BMWと組んだトヨタは、世界でも早くからFCVの開発に取り組んできた一社。2002年にはFCVの試験的なリース販売を開始。10年秋には、15年をメドにセダンタイプの量産仕様車を「顧客が納得できる価格」(トヨタ)で一般販売すると公表している。

BMWとの共同開発は、FCスタックのほか、水素タンク、モーター、二次電池など重要技術全般に及ぶ。「FCVの開発には大変なコストがかかる。BMWと協業することでリソースが増え、開発がさらにスピードアップできる」(内山田竹志・トヨタ自動車副社長)と期待する。

共同開発したFCVの基本コンポーネントを基にして、新しいFCVを20年を目標に投入する計画だ。ボディはそれぞれが独自に手掛け、自社製品として展開する。トヨタは、FCVは20年代に本格普及期に入ると予測しており、年間数万台規模での販売を見込んでいる。

一方、日産は1996年から基礎開発に着手し、05年に自社製FCスタックを搭載した試験車を開発している。今回の提携では主に日産がFCスタック、ダイムラーがFCスタックの制御機構の開発を担当し、フォードが全体の取りまとめを担う。早ければ17年にも共同開発をベースにした量産市販車をそれぞれのブランドで投入するとしている。

日産はEVの拡大に力を注いでいるが、志賀俊之COOは「長期的な環境対応の中で、EV、FCVのそれぞれ得意分野を生かして商品開発していく」と語る。

トヨタ、日産とも提携を強化する背景には、開発負担の増大や製造コストの高さに加え、グローバルでインフラ整備を速やかに進めたいという狙いがある。

FCVはまったくの新技術であり、市場投入当初の生産コストは高くなる。市販価格は「手頃な価格」といっても500万円程度はする見込み。燃料となる水素を充填するインフラも実質ゼロから整備しなければならず、膨大な投資が必要だ。

価格の高さやインフラの未整備がネックとなって普及が進まず、普及しないからコストも下がらずインフラも整備されないという悪循環は避けなくてはならない。それには、部品会社や政府、関連業界への働きかけが重要になる。世界各地域でのトップメーカー同士が組めば、発言力は一段と増すというわけだ。「究極のエコカー」の普及に向け、今後はトヨタ陣営と日産陣営の主導権争いが過熱しそうだ。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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