野村、業績復調でも持ち株会社制には課題 足元は安倍バブルを満喫

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野村ホールディングスは12年春、インサイダー関連事件などの反省を踏まえた新経営計画を発表。そのなかで、16年3月期に、「営業部門」「アセットマネジメント部門」「ホールセール部門」の主要3部門で2500億円の税引き前利益を目指すとしている。

今回の第3四半期のみ税引き前利益は719億円。市場環境は平坦ではないことを忘れることはできないものの、今第3四半期の利益水準を4倍して通期ベースに置き換えると、16年3月期の目標水準を上回ることになる。

傘下に不動産事業持つことの是非は

一方、こうした収益力の改善とは別に、今回の決算では、持ち株会社(ホールディングカンパニー)の傘下にある野村土地建物の存在が、不動産評価損によって、いやおうなくクローズアップされた。不動産評価損は、同社が設定した私募などの不動産ファンドが「投資終了近くなったために回収見込み額に応じて簿価修正した」ためであり、それが当期純利益への影響が軽微に終わったのは当社の投資持分が少なく、帰属損失が限定的になったからだ。

その意味では、最終的な影響度は限定的だったことになるが、証券業を中核とする野村ホールディングスが、グループ企業とはいえ、不動産事業会社という証券業とはかなり異質の事業体を傘下に配置していることが、はたして経営のわかりやすさ、理想的な収益バランスの形成という面で好ましいことかどうかは今後、議論される余地がある。

米国では、ホールディングカンパニーの下に、あまりにも多様な事業体が配置されることで経営が外部からわかりにくいという批判が起き、制度の是非にまで議論が発展した。この点、野村ホールディングスが今後、どのような対応に出るのかは注目したい。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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