大戸屋、渦中の社長が「お家騒動」を独占激白 創業の精神「母の心」はどこに消えたのか

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――株主総会の冒頭のあいさつでは、「久実前会長が亡くなってから数カ月にわたって話し合いを重ね、5月上旬に今後の方向性で合意した」としている。どんな内容で合意したのか。

ひとつは創業家と経営陣が一緒になって、大戸屋を発展させていこうという話だ。前会長の理念を継ぎ、手作りや出来たてにこだわった、大戸屋にしかできない料理をしっかりと出していくこと。もうひとつは、(前会長の息子である)智仁氏のキャリアだ。智仁氏が実力をつけて、周囲の信任も得て、後継者になって欲しいという思いは、私だけでなく皆も持っていた。

――智仁氏は昨年6月の株主総会で常務兼海外事業本部長として選任された。が、父でもある三森久実・前会長が7月に亡くなって、11月に智仁氏の配置換えというのは、路線を変えたと思われても仕方がない。

前会長が存命であれば、(智仁氏が)一緒に海外事業をやりながら、という選択肢もあったかもしれない。ただ、私としては1つ1つしっかりとステップを踏んでいって欲しいという思いがあった。智仁氏が担当することになった香港は、直営で経営も安定している。そこで社長業をやりながら、現場経験や語学の習得をしてほしいと思い辞令を出した。

すれ違いの理由は「わからない」

――だが、智仁氏は今年2月に取締役を辞任した。

三森久実氏の没後、人事をめぐって対立が表面化した(撮影:尾形文繁)

行き違いはあったが、話し合いを重ねて最終的には“皆で大戸屋をよくしていこう”と合意をした。

話し合いの中で創業家の方から、元会長で相談役最高顧問の河合直忠氏と、医師でもある三森教雄氏(久実氏の次兄)を役員の候補に推挙したいという申し出があった。

――5月18日に人事案を発表してから、今まで智仁氏、三枝子氏からは一切アプローチがないという認識でいいのか。

そうだ。5月18日に取締役会で人事案の承認を得て、発表した。翌日には創業家から反対の意向が示されたと報道で知って、驚いた。説明に行く暇もなかった。

――なぜ、こうした”すれ違い”が生じてしまったのか。

結論から言うとわからない。何か具体的なものがあったかと言われると、はっきりしたものは思いつかない。創業家と経営陣にとって、大戸屋の理念や路線は一緒だ。ここは変わっていない。ただ、事実として久実前会長が亡くなったことによる不安感、心配感、多少の混乱はあった。

会社にいるわれわれは遺志を継いで、大戸屋を成長させていこうと思っていた。創業家と経営陣が一緒に手を握っていくことが、経営の安定につながる。株主やお客様、従業員も含めて皆が安心することになる。

一方で、家族を亡くした創業家からすれば、また別の不安があったのかもしれない。だから、2015年9月から8~9カ月に渡って話し合いはしてきた。何度も話し合いをして、「将来の大戸屋を良くするために、創業家と経営がしっかり手を握っていこう」と、お互いが納得した合意が出来たはずだった。

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