ハンガリー中央銀行の教訓に学べ 政権と中銀の緊張関係は日本と類似
ひるがえって日本である。前述のように首相返り咲き、総選挙中の憲法改正と中銀法改正の主張、隣国との緊張といったヘッドラインは見事なまでに符合する。しかし、一院制のハンガリーと異なり、日本には参議院がある。総選挙中の主張は簡単には表に出せない。
拙速な改革は避けよ
中央銀行に関しては政策(審議)委員の入れ替えが最近あってハト派が入った、総裁の任期切れも近い、中銀法改正の恫喝を受けているという点で合致するが、異なるのはハンガリーや欧州の中銀法改正の焦点がプルーデンス政策(システムの安定を目的とした政策)との絡みに焦点が当たっているのに対して、日本の改正論議は別目的で行われていることだ。
98年施行の現行日銀法は当時の状況で中央銀行研究会、金融制度調査会の日銀法改正小委員会の2つの委員会での議論を相応尽くしてのものであり、その前の大蔵省改革プロジェクトから金制調の答申提出まで、1年の議論を経ている。
拙速に改正を行うよりは、当時の議論にはなかった、たとえば各国のマクロプルーデンス政策の帰趨等を見て、十分な議論を経て改正の要否を判断すべきであろう。
なお、これまでの円高はそれによる生産資源の海外流出の恒常化、技術蓄積の阻害など履歴効果などから見ても限界に近いものであり、安倍政権が強い意志を示す手段として中銀法改正議論をしたのであれば、一定の役割は果たしているのであろう。
その際には目的の独立性はもとより、手段の独立性まで侵してしまうと将来へのコストが大きい。中銀総裁の任期はおおむね議員の任期より長く設計されており、政権交代の時に軋轢が起こることは、国際的にも特殊ではない。
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