「移民問題」は米国の未来を大きく変える 約30年後、白人は少数派になっている

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日本では共和党は日米関係重視、その一方で民主党は日本より中国重視と思われがちだが、こういった見方には根拠がない。根拠のないことではなく、米国社会での構造変化の「文脈」に目を向けたほうがいい。

──中南米系の投票行動に特徴はあるのですか。

西山 隆行(にしやま たかゆき)/1975年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て、2014年9月から現職。専門は比較政治、アメリカ政治。著書に『アメリカ政治──制度・文化・歴史』、共編著に『マイノリティが変えるアメリカ政治──多民族社会の現状と将来』など(撮影:今井康一)

中南米系の白人も元をたどれば多くがスペインからの人たち。中南米系の人たちは基本的に大統領選で民主党に投票するが、州や市のレベルの選挙では、同じ中南米系が立候補すると、共和党候補でも投票する傾向がある。調査では中南米系の人は民主党支持が共和党支持より確かに多いが、支持政党なしという割合もかなり高い。中南米系の人たちは有権者登録をあまりしていないのもまた事実だ。

選挙の投票に行く人の割合は、白人が全体の75%ぐらい。トランプ氏の「過激発言作戦」は短期的に見れば合理的なのかもしれない。だが、4年後や8年後の大統領選を考えれば、中南米系を取り込みたい共和党主流にとっては痛手だろう。白人ブルーカラー層が特にトランプ氏支持に流れている。この傾向はレーガン時代から兆しが見えたが、一気に太い流れになった。

移民改革法のカギを握る共和党の動き

──オバマ氏の移民政策は共和党のレーガン時代に近いのでは。

そう。それ以外のやり方ができない。民主党、共和党ともに移民受け入れは国是。不法移民の扱いをどうするか。賛否のある中で、両方の立場を満足させる行政命令を発する。不法滞在者のうち300万なり500万といったある程度の人数に市民権とは別の合法的な地位を与える一方、不法労働を取り締まり、国境警備も厳格にして、合法化反対派にも目配りする。

──移民改革法まではいかない?

次期大統領が就任する来年1月20日までに議会がどう動くか。民主党はたぶん賛成。読めないのは共和党。トランプ氏が今後も有権者の不安をかき立てて、今まで選挙に行かなかったような人たちをトランプ氏支持という形で動員できると考えた場合には、「コートテール」で、つまり大統領選に引きずられて同じ政党の議員に投票してもらえる。その流れに乗るのが得だとなれば、現政権提案の移民改革法案に反対という共和党議員が増える。

しかし、逆にトランプ氏が失言続きで大敗すると見なしたら、別行動。現政権に協力して法案を通そうとする可能性はある。銃規制やテロ発生、英国の動向など、この半年、選挙直前まで何が起こるかわからないので、予断を許さない。

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