都内「痴漢被害」7割が電車や駅で起きている 女性専用車、防犯カメラの設置進む鉄道各社

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では、男性の側はどうか。「モラルの改善が必要」「小さい時からの教育で、痴漢とか女の子に関する道徳的な教育をやるしかない」「企業の協力や各企業の教育が、非常に大事になってくる」などと、努力や取り組みの話がほとんどだ。

ここに現れているのは、男性と女性での痴漢に対する意識の差だ。女性は、男性の痴漢に対する恐怖心が大きい一方、男性はどこかモラルの問題としてとらえている。男性が考える以上に女性は痴漢の恐怖と闘っていることがわかるが、一方で、男性には「冤罪」の恐怖がつきまとう。

報告書によると、車内で痴漢に間違われるのではないかとの不安を感じている男性は59.6%にのぼる。「どうすれば(女性)被害者を援助することができると思うか」との問いに対しても、52人中6人が「冤罪に荷担する恐れがあるので援助できない」と回答しており、男性側は冤罪被害に対する根強い不安感が伺える。

また、現在では全都道府県の迷惑防止条例で男性も保護対象となっていることからもわかる通り、男性が被害者となるケースもある。「痴漢される側」の女性と「痴漢する側」の男性という構図だけではなく、男性も冤罪をはじめ、あらゆる形で被害を受ける可能性のある犯罪が痴漢なのだ。

進む車内の防犯カメラ設置

では、電車内での痴漢に対してはどのような対策が講じられているのだろうか。報告書では、「駅構内等の警戒と電車内のアナウンス」「女性専用車両」「電車内防犯カメラ」「電車内での多発箇所へのポスター等の掲示」が「鉄道事業者における取組み」として記されている。

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JR埼京線の大宮寄り先頭車には車内防犯カメラが設置されている(写真:HAYABUSA / PIXTA)

JR東日本にどのような痴漢対策を行っているかを聞いてみると、代表的なのは埼京線の防犯カメラ取り付けだ。2009年末から大宮寄り先頭車両の1号車に導入しており、それにより痴漢が半減したとの報道もあった。

女性専用車の導入もJR東日本の路線としてはいち早く2001年7月から夜間の列車に試験的に導入し、現在では朝方にも運行している。女性専用車は、現在では首都圏、関西圏のJR・大手私鉄・地下鉄の主要路線の大半に広がっている。中央快速線・常磐線各駅停車・総武線各駅停車・京浜東北線では通勤時間帯に呼びかけの車内放送も行っているという。

防犯カメラの導入はほかの鉄道でも少しずつ広がっており、京王電鉄が2011年から一部車両に導入しているほか、東急電鉄はこの春、全車両に防犯カメラを導入すると発表した。まずは多摩川線・池上線の1編成に導入し、2020年までに全車両に設置する。

東急電鉄ではつり革の盗難事故などがあり、車内の犯罪を抑制する必要に迫られていた。そのために防犯カメラを取りつけたと東急はいう。痴漢対策だけではなく、車内での犯罪一般への対策ということだ。東急電鉄はブランド力の高い鉄道会社である。その信頼を守るため、という側面もあるだろう。

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