介護に非協力的な姉、相続で「差」はつくのか 趣味命で「自分の生活を犠牲にしたくない」

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したがって、子に経済的に余力があって、親が扶養を必要とする状態である場合には、親の生活費や介護費用の経済的負担をする義務が子に発生します。

日常生活の世話をする介護義務はありませんが、介護サービスを利用し、その費用を負担するといった義務が生じる可能性があるということです。

この扶養義務は、同居しているか否かとは無関係です。ですから、今回のケースで、A子さんの義理の母を扶養する義務を負うのは、A子さんの夫と、義理の姉2人(B子さん、C子さん)ということになります。

扶養義務者が複数いる場合に、誰が、どの程度扶養の負担をするかは、一次的には、当事者の協議で決めることになります。協議がまとまらない、または、協議をすることができないときには、家庭裁判所の調停か審判で決定します(民法878条、879条)。

すでに介護を開始している場合は、ここに注意

なお、この扶養義務は、直系血族と兄弟姉妹が負うとされているので、特別な事情があるとして裁判所の審判がなされない限り、姻族は負いません(877条2項)。したがってA子さんは本来、義理の母について、介護義務はもちろん、扶養義務も原則として負っていないということになります。

もっとも、現に高齢者の介護を開始している場合、介護者は高齢者虐待防止法が規定する「養護者」としての義務を負います。介護をいきなり中止して放置することは違法であり、場合によっては犯罪にもなりますので注意が必要です。

一方で、高齢化社会の進行や景気の後退などにより、子が自己の生活を確保するのに精一杯で、親の面倒を見ることができないという社会的事象が存在していることも事実で、負担の押し付け合いになるなど、実際には解決が大変難しい問題といえます。

今後は、民法上の扶養義務の問題という視点だけでなく、社会保険制度や公的扶助等を含めた、より広範な見地からの検討が必要であると言われています。

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