シャープ株主総会、鴻海傘下入りを承認 個人株主から経営批判相次ぐ
[大阪市 23日 ロイター] - シャープ<6753.T>は23日開催の定時株主総会で、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業<2317.TW>への第三者割当増資や鴻海ナンバー2の戴正呉副総裁ら10人の取締役選任など6議案すべてを承認した。第三者割当増資は早ければ月内に完了する予定で、払い込み後に戴氏は社長に就任する。シャープは鴻海の下で立て直しを図るが、鍵を握るパネル事業は競争が激しい上、人員削減などのリストラも避けられない情勢で、順調に再建できるかは不透明だ。
鴻海は3888億円を投じてシャープ株式の66%を取得、シャープを傘下に収める。高橋興三社長は出資完了後に退任する。高橋社長の退任により取締役は9人体制となり、このうち6人が鴻海が指名した取締役となる。
株主総会では鴻海の支援を仰ぐことになった経営陣に対する批判が相次いだ。高橋社長は「経営のスピードが世の中のスピードについていけなかった」とあらためて陳謝。橋本仁宏常務は「成長投資資金の確保、財務体質の改善、シナジー効果の確保の観点で鴻海の支援を受けることがベストと判断した」と理解を求めた。
鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は4月2日の買収調印時に「従業員にはなるべく全員残ってもらえるようにしていきたい」と雇用に配慮する姿勢を見せたが、その後、人員削減の可能性に言及したことで、社内には動揺も広がっている。橋本常務は「早期の黒字化に向けた構造改革としてグローバルベースでの人員適正化を検討する必要は当然ある」とリストラの可能性を示唆したが、「現時点で決まったものはない」とも付け加えた。
<有機EL視界不良>
シャープ再建の鍵を握る「有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)」。有機ELは液晶に比べて薄く、輝度が高いため、スマートフォン(スマホ)や車載向けディスプレー、薄型テレビなど幅広い分野での成長が期待されている。鴻海はシャープへの支援額を1000億円減額したが、有機ELの投資額を2000億円で据え置いたことからも、期待の高さがうかがえる。
だが、有機ELは韓国勢の牙城で、試作ラインすら立ち上がっていない同社が韓国勢を切り崩すのは容易ではない。中国勢など参入が相次げば、価格競争に陥る可能性もあり、思惑通りに事が運ぶかは不透明だ。桶谷大亥常務は「量産ラインは持っていないが、十数年来にわたり、基礎検討は徹底的にやっている」と説明。「早急に技術を確立して、(韓国を)一気に追いかけていきたい」と事業拡大に意欲を見せた。
一方、縮小を余儀なくされている海外展開については「鴻海の非常に強いグローバルの生産能力、調達、技術、顧客基盤を活かすことで、グローバル企業として全方位の海外戦略を検討していきたい」(野村勝明副社長)と拡大する意向を示した。
シャープの2016年3月期連結決算は、最終損益が2559億円の赤字となり、2期連続での巨額損失となった。この結果、債務超過に陥り、東証の基準で8月1日付で1部から2部に指定替えとなる見通し。鴻海の出資が完了すれば債務超過は解消する。
出席株主は1029人。18人(延べ19人)が質問に立った。所要時間は3時間23分。
*内容を追加します。
(志田義寧)
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