きゃりーとコラボ!西武鉄道「ハジけた」理由 堅いイメージの社風が「攻め」へ大転換

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「『うちの沿線にこんな電車が走っている』と地元の誇りに思ってもらえる、沿線を自慢できるような電車にしたい。だからど派手にしました」と、スマイル&スマイル室新規旅客創造担当の中山寛・課長補佐は「KPP TRAIN」について語る。

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楽曲のイメージでラッピングされた「KPP TRAIN」の外観

中山さんが今回のコラボ企画を思い立ったのは2年ほど前。テレビ番組できゃりーさんが西武沿線の田無出身と知ったのがきっかけだ。

「なにかチャンスがあれば」と思っていたところ、西武で2012年から続いていた100周年アニバーサリーが終了し“新たな100年の始まり”となる2016年がきゃりーさんのデビュー5周年にあたることから「お互いにいいタイミング」と企画を持ちかけ、約1年前から実現に向けて動き出したという。

目指したのは「沿線に刺激を与える、動く観光名所」(中山さん)。外観だけでなくドアなど内部も装飾したのは「『動くきゃりーさんの家』のようなイメージを出したかったから」という。ひときわ目立つショッキングピンクのカラーリングはラッピングではなく塗装で、その上に楽曲をイメージしたデザインなどをラッピングしている。「KPP TRAIN」の運転期間は6月4日から9月29日までの約3カ月間。一般的に短期間のイベント車両は塗装ではなく全体をラッピングとすることが多いが「(手間のかかる)塗るという本気度は分かる人には分かるし、説得力がある」と塗装にした。

運行開始初日は約330人のファンを乗せ、きゃりーさんが「車掌」となって途中の保谷駅までを往復。車内に積み込まれたスピーカーから流れる数々のヒット曲と、車内を回るきゃりーさんにファンからは歓声が沸いた。西武線沿線の所沢に住むという「きゃりー大ファン」の13才の女の子は「こんな電車なら乗るのが楽しみになる」。沿線外から参加した男性ファンも「これが毎日走っていたら(西武沿線に)行きたくなりますね」と語った。

球場に足を運んでもらうのと同じ

初日のイベント列車で車内を回るきゃりーぱみゅぱみゅさん

西武が話題を呼ぶイベントを仕掛ける狙いは、まさにこのような「乗るのが楽しみになる」「沿線に来たくなる」人を増やすことだという。中山さんは「沿線外の人にとっては西武線沿線を知らないという心理的距離感があるんですよね。そこでまずはイベントを通じて経験するきっかけを創出することで、馴染みが出てくる。愛着を持ってもらえば、そこから沿線に住むきっかけも生まれる」と語る。

「(野球チームの)ファンになって球場に足を運んでもらうのと同じ」と語る中山さんは、野球ビジネスの経験者だ。西武ライオンズやプロ野球パ・リーグのマーケティング会社への出向を経て2013年に「スマイル&スマイル室」へ。同年は、ピーク時には180万人台だった1日平均輸送人員が約167万人まで減少し、その回復が課題となっていた年だったという。

そこで取り組んだのが、野球ビジネスの経験を活かした「ターゲットを明確にした戦略」だ。鉄道は公共性の高さもあり、幅広い年齢層に受け入れられることを念頭に置いた企画が多くなりやすい。だが、中山さんは「野球も広い年齢層を対象にしているが、ファミリーや女性など、イベントごとにある程度ターゲットは定める」という。

次ページターゲットを絞った戦略が奏功
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