スズキの燃費不正、どこまで「罪」といえるか 鈴木修会長、不正に「認識甘かった」と懺悔

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日本では1991年に惰行法が走行抵抗値の測定方法に決められた。その後、測定機器が進化している中で、四半世紀見直されずに来ている。消費者ニーズが多様化している日本では、ベース車両からの派生車種も多い。それらをすべてを惰行法で計ることが適切なのか。

法令で定められているのが惰行法である以上、勝手に自己流で計測することは許されない。しかし、将来のあるべき計測方法を考えてみる必要はあるのかもしれない。

ここで話をスズキに戻そう。今回、スズキがヒアリングした関係者約20人のうち、法令違反と認識していたのは3割程度だという。その3割についても問題意識は希薄だったようだ。スズキの説明から見えてくるのは、正しい測定方法ではないとは認識していたが、それほど悪いとは考えておらず、むしろ、より良い方法を使っているとさえ考えていた現実だ。

だから、隠蔽といった陰湿さは伺えない。「惰性でやっちゃった」という修会長の言葉がそれを裏付ける。

しかし、やはりこれは深刻な事態だろう。スズキは自分たちの都合や論理が優先し、法令を無視する、そして、それがチェックされないという欠陥を抱えた組織だったということだからだ。

正規の惰行法で得たデータを使っていないため、惰行時間や天候、気圧などの細かいデータでも、小さな不正がいくつも行われていた。ルールを守らないことが当たり前になれば、別の不正も起こりうる。少なくとも当分、スズキは疑いの目で見られることになるだろう。

処罰を下すのは消費者

6月1日に発表された5月の軽自動車販売。スズキは前年同月比84.6%に沈んだ。主力車種の販売を停止している三菱自動車や日産自動車の落ち込みを食う形で、ダイハツ工業やホンダが100%を越えことに比べると、スズキの不振が目立つ。一方、軽以外の登録車において、スズキは82.4%増と大きく数字を伸ばしている。登録車での新車攻勢をかけており、その成果が現われている。

ただトータルでは6.6%減と主力の軽自動車の落ち込みをカバーするには至らなかった。不正問題の影響がどこまで響いたかは明確ではないが、信頼を傷つけたスズキへの逆風は確実に吹く。これまでよりも競争で不利に立たされることは間違いない。

「信頼を失うのは一瞬。取り戻すには時間がかかるが」。記者会見場を後にする鈴木俊宏社長にそう問い掛けた。厳しい表情で「わかっています」と答えて俊宏社長はエレベーターに乗り込んだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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