素材も耐えきれぬ"六重苦"と電機凋落 昭和電工が国内工場の抜本再編へ
ただ、統廃合となれば閉鎖する工場では雇用問題が大きな焦点となる。「それぞれ現地の雇用もあり手をつけずに来た。微妙な問題」(市川社長)だが、環境の悪化を考えれば、そうも言っていられない。国内事業の抜本的な見直しは待ったなしである。
歴史的な水準に定着している円高や電力コストの上昇、自由貿易協定(FTA)への対応の遅れ――など、日本の製造業は海外に比べて競争条件で不利な点が指摘され、“六重苦”に置かれている。
加えて、半導体や液晶パネルなどをはじめとして、これまで国際的に強く、素材メーカーとともに成長してきた日本の電機メーカーは韓国、台湾、中国勢に侵攻され、競争力を失っている。
石油化学の国際競争力も低下
自身の問題もある。昭和電工が主力の一つとする石油化学においては、安価な原料を使う中東勢の台頭や、最大の需要地である中国における国内生産拡大の動きに、米国のシェールガス革命なども加わり、競争力は低下。石油化学の基礎原料であるエチレンプラントは、今年8割台の低稼働を強いられ、「来年(13年)も大きな需要回復は見込めない」(市川社長)。
こうした状況下にあって、国内で従来どおりの生産体制を維持することは難しい。そのうえ、今後、新たな生産基地は海外に設けるのが定石――。というのが昭和電工の置かれた状況だ。
そしてこれは昭和電工にかぎらず、日本の素材メーカーに、多かれ少なかれ共通した問題だろう。ニッポン製造業の空洞化が一段と進む。そんな可能性がますます強まってきた。
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