東武東上線「中間車両のみの脱線」で深まる謎 台車に亀裂、枕木に残る傷が発見されたが…

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中板橋駅を出た直後にあるポイント。枕木に傷があるのがわかる(提供:東武鉄道)
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中央に傷が続いている枕木(提供:東武鉄道)

その後の調査では、中板橋駅を出た直後にあるポイントの手前のレールに車輪が乗り上げたような跡があり、ポイントの部品や踏切の障害物検知装置などが破損していることや、この付近から脱線現場まで枕木に傷があることが判明。また、脱輪した台車の右側に約10㎝の亀裂が入っていることもわかった。

鉄道技術ライターの川辺謙一さんは、現場のポイントの写真から「ポイントの枕木の中央に傷があるほか、トングレール(ポイントの切り替え部分の先端のレール)が曲がっているのがわかる。この時点ですでに脱線しており、車輪がここに当たった可能性がある」と指摘する。

今回の事故の疑問点の一つは、中間車両の一つの台車だけが脱線しているところだ。川辺さんは「線路に異常があったとすれば先頭車両から脱線する可能性が高い。線路より車両に異常があった可能性があるのでは」という。

脱線した車両は東上線をはじめ、東武各線で使われている通勤電車の「10000型」だ。東武鉄道によると、脱線した「前から5両目の車両」は1989年製造で、台車にモーターを搭載した電動車。3月の点検時には異常はなかったという。また、台車枠に亀裂があったことを受け、同型台車の198両をすべて点検したが、いずれも異常は見つからなかったという。

台車枠の亀裂はなぜ入った?

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台車に入った亀裂(提供:東武鉄道)

台車枠の亀裂が脱線によって生じたのか、あるいは脱線する前からあったのかは、現段階では不明だ。川辺さんによると、台車枠に亀裂が確認された事例はここ20年ほどの間にもいくつかあり、1993年2月23日にはJR羽越本線で、台車の亀裂が原因でコンテナ貨物列車が脱線する事故が起きているほか、2000年には住友金属工業(当時)製の台車に亀裂が相次いで見つかり、運輸省(当時)が各鉄道事業者に同社製の台車を緊急点検するよう指示を出した例などがある。

だが「なぜここに亀裂が入ったのか」と川辺さんは首をかしげる。「これまでは比較的かかる力が小さい溶接部分に亀裂が入った例が多く報告されたが、今回の事故車両で亀裂が入ったのは、とくに大きな力が働き、亀裂が入れば走行に支障をきたす重要な部分」(川辺さん)だからだ。

仮に台車が原因であれば、同種の台車を使用しているほかの鉄道にも問題が波及しかねない。また、今回はスピードが比較的遅く、トラブル発生後すぐに緊急停車したため大事には至らなかったが、もし高速走行中に同様の脱線が発生し、反対側の線路に車体がはみ出すようなことがあれば大事故につながる恐れもある。安心して利用できる鉄道の維持に向け、早期の原因究明が待たれる。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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