東京メトロ、好決算の陰で事故頻発の不安 ドア挟み、レール破断。中で何が起きている?

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東京メトロも多角化の必要性は認識している。駅ナカ商業施設「エチカ」を表参道や池袋で展開するほか、駅ナカ売店「メトロス」もコンビニ大手のローソンと組んで「ローソンメトロス」として品揃えを強化するなどの施策を進めている。

しかし、東京メトロには、地上に事業展開をできるスペースが乏しいという足かせがある。このため、他の私鉄大手のように百貨店やホテルといった事業へと踏み込めない。

鉄道で稼いだ資金を地上の土地買収につぎこむことは可能だろう。だが、奥社長は「多角化に向けるべき資源は、鉄道にとってよいことに使いたい」と、単純な土地買収は考えていない。東京メトロが目指しているのは、駅のバリアフリー化と事業多角化の両立だ。

そこで導き出した解が、他の事業者と共同で取り組む街作りだ。たとえば今年4月からは茅場町駅と赤坂駅で、駅に隣接する土地・建物所有者と共同開発を行ない、街の顔となる駅出入り口の設置を目指すという公募型連携プロジェクトに着手している。これまではエレベーターやエスカレーターを設置したくても、地上に自前の土地がなくて断念せざるをえなかったが、地権者との共同開発であればこうしたハードルをクリアできる。

これらはバリアフリーなど鉄道の課題解決としての不動産開発だが、さらに街の活性化に寄与する不動産開発を推進する計画もある。地下と地上の一体的な不動産開発を実現し、地上部にオフィスやホテルを造ることも検討していくという。多角化戦略の舞台を地下から地上へ変えるわけだ。

利益成長の陰でトラブル頻発

東京メトロの成長戦略は広がっているが、その陰では一歩間違えれば大惨事につながりかねないトラブルが相次いでいる。

事故の再発防止を訴えるメッセージが掲げられている

たとえば、4月4日に半蔵門線九段下駅で起きたベビーカーの引きずり事故。ドアにベビーカーがはさまれたことに車掌が気づかず発車してしまうというありえないミスが起きてしまった。被害はベビーカー破損にとどまり、けが人が出なかったのは幸いだった。

実は事故のわずか3日前の4月1日に社員の教育や訓練を行なう「総合研修訓練センター」が開所していた。同センターには同社が過去に起こした事故の再発防止を目的とした「安全繋想館」が併設されており、同館の報道公開時には奥社長自ら安全確保への責任の重さをビデオメッセージで伝えた。が、残念ながらその想いは現場に届かなかった。

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