韓国の大企業は、なぜ栄枯盛衰が激しいのか 「大規模企業集団」30年の歴史を振り返る

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1939年に石鹸メーカーとして出発した双龍グループは、保険や貿易、セメント、重工業、建設と時代の変化に合わせてその事業領域を拡大し、1990年代までは成長を続けた。だが、自動車事業の失敗を契機にグループの足下が大きく揺らいだ。最終的には1997年の世界金融危機が引き金となり、主力企業である双龍製紙や双龍自動車、双龍精油、双龍重工業の順に売却、結果的にその姿を消した。双龍建設も2014年に上場廃止となった。

また、1986年に8位だったポムヤン商船はSTXグループに吸収され、高麗合繊は高合(コハプ)グループとなってその命脈を維持しているが、規模は縮小した。

M&Aによりベンチャー企業が大企業集団に

新顔も目立つ。ベンチャーから出発したカカオ(IT、通信など)とセルトリオン(バイオ医薬品の開発)が初めて、大企業集団入りを果たした。

2016年は、カカオ、セルトリオンだけでなく、ハリム、SH公社、韓国投資金融、錦湖(クムホ)石油化学の6社がリスト入りとなった。

カカオは2016年1月にロエンエンターテインメントを買収し、資産額が5兆1000億ウォン(約5100億円)となった。グループ内企業も45社と増加している。セルトリオンは資産価値が5兆9000億ウォン(約5900億円)となったが、これは株価が大きく上昇したためだ。

ハリムは2015年、資産規模が4兆2000億ウォン(約4200億円)のパンオーシャンを買収して資産価値が9兆9000億ウォン(約9900億円)へ上昇、ランキングでも38位となった。

これら新参にとって、大企業集団入りは必ずしも喜ぶべきものにはならない。大企業集団に指定されると、グループ会社間の相互出資と新規の循環出資、債務保証、企業内取引ができなくなるためだ。大規模な内部取引や非上場企業重要事項、企業集団現況といった経営上の主要内容も公開義務が生じる。

カカオはこの影響をすぐさま受けた。推進中のネット銀行事業に支障を来すことになったのだ。現在、国会ではネット専門銀行に限って「金産分離」(産業資本の銀行による株式所有を制限するもの)原則を適用しない、あるいは緩和する法案も上程されている。しかし、この法案では事業主が大企業集団ではないと適用されない。

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