満員電車は回避可能?電車の混雑予測が進化 東京オリンピックの鉄道、現状では混乱必至
では、ナビタイムはどうやって混雑予測を行なっているのだろうか。予測の基礎となっているのは、「大都市交通センサス」である。首都圏、中京圏、近畿圏の3大都市圏の旅客流動量や利用状況を把握する目的で、国土交通省が5年ごとに行なっている鉄道・バスなどの利用実態調査とその分析だ。2015年の秋に各駅で実態調査が行なわれており、ご記憶の方もいるかもしれない。
この大都市交通センサスをベースに、その他のデータを盛り込み、独自の実地調査の結果も加えているという。現在、電車の混雑予測は乗換ナビタイムを対象としているが、通常の「ナビタイム」でも利用できるよう準備中とのこと。そうなれば、多くの人が利用できるようになる。さらに将来は列車の混雑具合だけでなく、何両目が混んでいるのかといった車両ごとの混雑情報や、ホームの行列の前から何人目までなら座れるかといった、より詳細な方向に拡張していくことも検討している。
東京オリンピックではキャパオーバーも
一方で、大都市交通センサスのデータから2020年東京オリンピック開催時の首都圏の鉄道利用動向の予測も行なわれている。オリンピックでは競技種目によっては朝に開催されることもある。観戦客の移動と通勤ラッシュが重なれば、混雑が増すのは間違いないだろう。はたしてどのような事態になるのか。
予測を行なったのは、中央大学理工学部の田口東教授。2005年に「ラッシュ時の東急田園都市線はすべての急行を各駅停車に変更したほうが輸送力は向上する」という論文を発表し、話題を集めた。その後、2007年には田園都市線で朝の上り急行が準急に置き換わり、混雑の激しい二子玉川―渋谷間が各駅停車となっている。
田口教授はオリンピック開催時の首都圏の輸送動向を試算するにあたって、まず大都市交通センサスのデータを使って、1日800万人という通常客の移動状況を推計した。オリンピック観戦客については「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会立候補ファイル」をもとに、もっとも観戦客の多い日の54競技、37会場への移動を推計した。
首都圏では1日に800万人が鉄道を利用する。全員が1日に行きと帰りに1回ずつ鉄道を利用するという前提で1日に1600万の「トリップ」があると推計した。これに対して、もっとも観戦客が多い日の観戦客のトリップ数は130万。通常客の8%程度だ。とはいうものの、りんかい線、ゆりかもめ、埼玉高速鉄道の3路線は会場へのアクセス線であるにもかかわらず輸送力が十分とはいえない。競技のスケジュールに合わせて電車が混雑し、駅でも客をさばききれない。
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