現在も西洋が世界をリードするのは、消費社会という西洋モデルがさまざまな価値観を凌駕するからで、共産圏崩壊も消費社会の広がりが原因だった。
最後の要因は労働倫理で、勤勉と倹約の思想が、さまざまな面で接着剤の役割を果たし、西洋文明の全盛を可能にした。もし6つのキラー・アプリが導入可能なら、他文明も成功が可能で、現在の中国は覇権を獲得する可能性があるという。ただ、中産階級が成長する過程で経済が失速するリスク、社会不安や近隣国の反中機運で国力が低下する可能性もあると論じる。
文明はさまざまな要素が絡み合う複雑系で、致命的問題を抱えても一時的には機能するが、臨界に達すると、急激な崩壊が生じる。西洋は外的脅威ではなく、内部崩壊の兆しに気を付けるべきだと論じる。凡庸にも思える結論だが、近年の欧米の金融危機や財政危機、ユーロ解体危機などは、まさに西洋の内部崩壊の兆しなのかもしれない。
心配なのは日本だ。このまま緩慢な衰退が続くと考える人が多いが、公的債務が臨界に達した途端、明王朝のような急激な崩壊が始まる恐れはないのか。
Niall Ferguson
米ハーバード大学の歴史学部およびビジネススクール教授。1964年英国スコットランド生まれ。英オックスフォード大学モードリンカレッジを卒業。その後、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学などで教壇に立ち、2004年から現職。
勁草書房 3465円 545ページ
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