米国産ガスの対日輸出には限界 米国シェール革命と日本《1》

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--米国での埋蔵量はどう考えたらいいですか。

 

米国エネルギー省のエネルギー情報局(EIA)が今年発表した直近推定では、技術的に生産可能な埋蔵量(TRR)として、シェールガスが482兆立方フィート、シェールオイルが332億バレルとなっている。ただ、TRRは経済性を無視しても生産できる量であり、すべてが生産されるとは限らない。また、今後の調査次第で大きく上振れ、下振れもありうる(ちなみに、米国の天然ガス消費量は年間で約25兆立方フィート、石油消費量は年間約70億バレル)。

--世界的に化石燃料への再シフトともいわれます。

中長期的にはその可能性はあるが、米国以外において今後数年でシェールガス、シェールオイルの生産が本格化するとは考えにくい。

その他の国々では埋蔵量の推定はあるが、データの精度が粗く、掘っても出なかったというケースもある。ポーランドはその一例。(米国を上回り世界最大のシェールガス埋蔵量といわれる)中国でも、資源のある場所が非常に地下深いうえ、遠隔地で近くに川がないため水圧破砕法が使いづらく、生産が難しいという事情もある。

また、米国以外は開発経験がないため、環境面を含めて法制・税制を整備する必要がある。欧州は比較的、人口が密集し、環境に対する意識が高いため、本格的な生産体制にたどり着きにくい。そのため、世界で生産が本格化するのは当面、米国、カナダぐらいで、その他の国々は2020年以降だろう。

--米国ではシェールガス生産拡大により国内の天然ガス価格が大きく下落し、開発業者のマージンが低下している。

今年4月に一時2ドル割れ(100万英国燃料単位当たり)となったのは、暖冬による民生用ガス需要の減少もあったが、2~3ドルになると、米国のシェールガス生産開発コストを割り込んでしまう。そのため、ガス掘削業者がオイル掘削へ移行する動きが増えている。

シェールオイルは原油価格が50~60ドル/バレルの水準でペイできるといわれる。シェールオイルが増産される一方、シェールガスの生産が頭打ちになっているのが実情だ。

また、ガスの大口ユーザーである発電所では、天然ガス価格が2~3ドルになると石炭による発電コストを下回るため、発電所向けガス需要が大幅に増えた。結果的に需給が引き締まり、在庫率も減って、ガス価格は3.5ドル前後まで戻っている。

 

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