「裏切り」への反発が米大統領選を突き動す 希望唱えたオバマのような候補はもういない

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民主党の側では、サンダース氏が選挙戦のメッセージを、ウォール街に対する攻撃から民主党への攻撃へと拡大させた。彼は1月、「われわれはウォール街や経済的な既得権益層だけを相手にしているのではなく、政治的な既得権益層とも戦っているのだ」と発言した。

彼は民主党候補として対抗馬であるヒラリー・クリントン前国務長官を、プランド・ペアレントフッド(全米家族計画連盟)の支援を受けていることを理由に、既得権益層の一部だと批判した。彼はゲイの権利を擁護する主要組織ヒューマン・ライツ・キャンペーンをも、既得権益層の候補者であるクリントン氏を支持していると非難した。

サンダース氏はヒラリー氏の夫であるビル・クリントン元大統領が行った政策に激しく反対している。昨年には「NAFTA (北米自由貿易協定) や中国との恒久的貿易関係に関しては、(クリントン元大統領に) 強く反対だ。ウォール街の規制緩和に関してもまったく賛成できない」と語った。

「クリントン政権は民主党を裏切った」

サンダース支持者の多くは、クリントン政権が民主党の価値観を裏切ったとみなしている。彼らは、クリントン元大統領がニュート・ギングリッチ元下院議長と進めた均衡財政や、多くのアフリカ系米国人が刑務所に収監される一因となった1994年の犯罪防止法などを引き合いに出している。

ビル・クリントン氏は1994年の犯罪防止法が「行き過ぎだった」と認めている。ヒラリー・クリントン氏は最新の討論会で「意図しない結果とはいえ、人々の人生に非常に不幸な影響を及ぼす結果を招いたことは申し訳なく思う」と発言している。

大統領選指名争いのトップを走る共和党のトランプ氏(左)と民主党のクリントン氏(右)(写真: ロイター/Scott Audette)

ビル・クリントン氏は、1980年のジミー・カーター氏、1984年のウォルター・モンデール氏、1988年のマイケル・デュカキス氏と、大統領選で民主党が3連敗した後に大統領の座についた。

こうした負けが続くと、党は「このまま進み続けるわけにはいかない」との結論を出してしまいがちだ。クリントン氏は、当時まだ優勢だったレーガン政権のコンセンサスに迎合することで、民主党員に力を取り戻させた。

レーガン政権のコンセンサスはジョージ・W・ブッシュ政権の失敗で崩れた。自由市場資本主義が2008年に経済を崩壊させた事実を踏まえれば、現在の自称「民主社会主義者」はさほど過激には思えない。時代は変わり、多くの民主党員は、党の真の価値観を裏切って妥協したクリントン政治に別れを告げることを望んでいる。

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